ビットコインはケインズの夢を叶えるか

「貨幣」から読み解く2014年の世界経済(下)

成長戦略に冷や水を浴びせる長期金利の急騰

「予想」の問題は、今後の日本経済にとって無縁の話ではない。それと密接に関連するのが、今年4月に税率が8%に引き上げられる消費税である。

アベノミクスは、トービン型のケインズ経済学において教科書どおりの政策である。つまり、「三本の矢」の1本目「大胆な金融緩和」でインフレターゲットを設定することでインフレ期待を高め、名目的な資産(貨幣、債券)の価値を目減りさせ、実体的な資産(株式、不動産)へと人びとの選好を移していく。それが資産価格の上昇を招き、消費にプラスに作用する。実際、すでに高額商品の消費が高水準で推移し始めている。

同時に、株価の上昇は、企業の設備投資への意欲を刺激し、それによってGDPが引き上げられる。もちろん「成長戦略」どおり、企業投資が持続的に上昇していくかは、日本企業の革新力に依存する。だが、これまでの日銀がデフレを放置し、「失われた20年」を招いたことを考えれば、黒田総裁の方針転換によって日本経済が新たな局面に入ったことは間違いない。

この好循環に冷や水を浴びせるものがあるとすれば、それは長期金利の早すぎる上昇(債券価格の下落)である。好況の結果としての金利上昇は「よい」上昇であるが、財政破綻のリスクで上昇するのは「悪い」上昇である。それは成長戦略に大きなマイナスになってしまう。

たとえばユーロ危機以前はEU加盟諸国の長期金利はほぼ同一であった。しかし2009年、ギリシャの政権交代によって国家予算の粉飾が明らかになり、財政破綻リスクが顕在化した瞬間にギリシャ国債の金利が急騰した。そこから、各国の財政規律の度合いが市場で選別されはじめ、財政状況の悪いイタリア、スペインの金利が上がり、フランス、ドイツの金利は低下し始めた。

この論理に従えば、金利の「悪い」高騰を抑えるためには、日本も財政再建が急務だということになる。これまで日本は、GDP比200%以上という巨額の債務残高にもかかわらず、長期金利がほとんど上がらなかった。その理由は、失われた20年で良い融資先を失った日本国内の金融機関が国債を保有していることもあるが、同時に「消費税率を上げる余地がある」と市場から見られていたことも大きい。社会保障を重視する欧州では20%を超える消費税が当たり前なのに、日本はわずか5%。いざ財政破綻の危機に瀕したら、いくら何でも日本政府は消費増税で対応すると考えられてきたのだ。

最大のリスクは安倍政権の国家観

消費増税は、もちろん短期的には消費に対してマイナスだろうが、法人税減税などと組み合わせれば、インパクトを最小限に抑えることができる。重要な点は、消費増税によって財政規律に対する信頼を回復させ、長期金利を抑制することだ。実際、消費増税の実施が決定的となった昨年9月には、長期金利は低下した。

現在、2015年に消費税率を10%に上げることの是非が議論されているが、私は毎年1兆円規模で肥大するといわれる社会保障費の問題を考えても、10%への増税は不可避であり、将来的にはそれでも足りないと思っている。むしろ、アベノミクスの成功に安心して10%への増税が見送りになったときこそ、長期金利が高騰し、景気の腰折れを招くことになるだろう。

このような議論をすると、「1997年に消費税を3%から5%へ引き上げたあと、日本経済は不況に陥ったのではないか」との反論が上がる。しかし当時の景気減退は、バブル崩壊後の不良債権処理が住専問題騒動で遅れ、日本が金融危機になったことが主因である。山一證券や北海道拓殖銀行の破綻は、小さな規模のリーマン・ショックだったのである。

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