ビットコインはケインズの夢を叶えるか

「貨幣」から読み解く2014年の世界経済(下)

また、「消費税は弱者に厳しい税だ」という声も多い。だが、消費額に応じて負担するという意味での公平性があり、富裕層も多い引退世代からも徴収するという意味で世代間の公平性もある。たしかに所得税は累進性をもつが、一方で、「トーゴーサン(10・5・3)」という言葉があるように、自営業者や農林水産業者などの所得の捕捉率が低いという問題も忘れてはいけない。

最後に述べたいのは、昨年12月の安倍首相による靖国神社の参拝である。中国・韓国のみならず、アメリカも「失望」という態度を表明し、現在でも参拝の是非が議論されている。じつは今後の日本経済における最大のリスクが安倍政権の国家観である。

右翼と保守は違う

現在、東アジアは地政学的にもっとも不安定な地域の一つである。先ほど、中国の領土拡張志向は国内の不安定性に起因しているといったが、北朝鮮は言うに及ばず、韓国も国内事情を抱えている。これに対し、日本は外圧に噴出しがちな内政問題がもっとも少ない国である。それは、「自由主義と民主制」という普遍的価値を前面に出した広範な国際関係を築ける位置にあることを意味する。

私は、最近のアメリカは、一方で自由主義を自由放任主義に置き換えて大きな格差問題を生み出し、他方でNSA(国家安全保障局)による監視問題が明るみに出るなど民主制に逆行する動きも見せており、先行きを憂慮しているが、自由主義と民主制に絶対的な信頼を置く国民がまだ分厚い層を成していることも確かである。そして、この普遍的な価値の共有を日本が率先して提示することこそ、アメリカのみならず、多くの環太平洋諸国や他のアジア、ヨーロッパ、アフリカ諸国とパートナーシップを結ぶ機会を与えるという意味で、それ自体の価値と同時に、地政学的な価値も大きいのである。

だが、靖国神社の参拝とは、日本の外交から普遍的価値を奪い、内部事情で動く近隣諸国と同じ水準にしてしまうだけである。右翼と保守とは違う。右翼とは、自分の内的心情を外部に向けて噴出させることだが、保守とは、この世界には個人や集団の知識や感情を超越した普遍的な価値が存在することを認めて、その普遍的価値を守ろうとすることである。アベノミクスのこれまでの成功が、安倍政権を保守にとどめておくか右翼政権にしてしまうかが、日本の将来を大きく左右するだろう。

(Voice2014年3月号より)

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