香港デモの若者を市民は見放しつつある 中国人観光客は9割減、繁華街は閑古鳥が鳴く

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「舞照跳、馬照跑(ダンスホールも競馬もそのまま)」

香港返還をめぐる英中交渉で鄧小平は中国への返還を危惧する香港市民にこう呼びかけた。返還から22年たった今、「馬照跑」の公約を破ったのは中国でも人民解放軍でもなく、逃犯条例改定への抗議活動を続ける過激派の黒シャツ隊、自称「勇武派」であることは言うまでもない。

その勇武派は、日本でも著名となった黄之鋒(ジョシア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)に率いられる「香港衆志」(デモシスト)の若者らが中心となり、抗議活動を過激化させている。8月12日には香港空港を占拠。キャセイパシフィック航空を中心に数百便以上が欠航となった。空港占拠は2日で幕を下ろしたが、香港空港には厳重な警備態勢がとられ、空港への出入りにはパスポートとチケットの提示が必要となった。

デモ隊が線路内に侵入、地下鉄の運行停止に

勇武派は9月にも空港占拠を再び計画した。警察当局によって空港占拠に失敗した勇武隊は、空港と市内を結ぶエアポート・エクスプレス線路内に投石、線路内に侵入して運行を停止させた。

「俺のハネムーンをどうしてくれるんだ!」

スーツケースを押して駆け足で空港へと急ぐ外国人の姿が、テレビ各局で繰り返し放送された。警察当局は膨れ上がる勇武隊に加勢しようと空港周辺に向かう若者の足を止めるため、エアポート・エクスプレスの運行停止を指令。さらにエアポート・エクスプレスに接続する地下鉄の運行を取りやめさせた。

「先週は隣の太子(プリンス・エドワード)駅構内、地下鉄車内で黒シャツ隊と警察が衝突して負傷者を出した。運行停止命令はありがたい。もうあんな衝突に巻き込まれるのは真っ平御免だよ!」

九龍一の繁華街で香港の歌舞伎町との異名をとる旺角駅の駅員は怒りがおさまらない。

普段なら人でごったがえす日曜夜であるのにもかかわらず、香港の銀座通りともいえる彌敦道(ネーザン・ロード)には人影もまばら。ひっきりなしに行き来するはずの2階建てバスも間引き運転されている。

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