「事故物件」だけを扱う不動産会社の本当の狙い 誰もがワケあり物件の所有者になりうる?

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親族の孤独死によって事故物件となった持ち家を相続した結果、思うように買い手がつかず手放そうにも手放せないオーナーは少なくない。成仏不動産で営業を担当する佐藤祐貴氏は、「(成仏不動産に対して)事故物件を相続した人からの相談が持ちかけられている」と言う。

目指すのは「事故物件版スーモ」

「事故物件を嫌悪する人は、住む側の立場にいる人だ。実際に事故物件を所有する立場の人は、事故物件のイメージアップを図りたいと考えている」(花原社長)。事故物件が増えるなら、事故物件を受け入れる人を増やさなければいけない。成仏不動産を立ち上げたのは、事故物件を気にしない入居者のニーズを満たすためでもある。

事故物件は通常の不動産ポータルサイトにも掲載されているが、サイト上では一見してそれが事故物件とわからない場合が多い。相場よりも家賃や売り出し価格が安いため問い合わせ自体は多いが、後に事故物件だと知って契約にまで至らないことも多い。入居希望者、物件の掲載業者共に徒労に終わる結果となりやすい。

逆に、最初から事故物件のみを掲載していることを打ち出せば、そうしたミスマッチもなくなる。「『事故物件版スーモ』のような、事故物件のポータルサイトを目指したい」(花原社長)。逆説的だが、事故物件を気にしない人がスムーズに事故物件と出合える場を提供することも、成仏不動産の役割だ。

今後、取引実績を重ねていけば、事故物件の相場が醸成されリフォームや売却もスムーズになっていく。誰もが事故物件を抱えうる時代、事故物件が活発に取引されるようになることは、不動産会社だけでなく、一般の人々にもメリットがありそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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