新興国市場急落、欧米有力ファンドも打撃 新興国市場急落で運用悪化
[ニューヨーク/ロンドン 6日 ロイター] -新興国市場の急落は、ブラックロックなどの有力ファンドにも打撃を与えている。新興国株・通貨の急落で、すでに年初来で10%も下落しているファンドもある。また、運用悪化がさらなる解約を呼ぶ状況となっている。
ブラックロックの株式ポートフォリオマネジャー、ウィル・ランダース氏は「今年は残念なスタートだ」と述べた。
新興国は2009年から2013年初めまでは、有望な投資先とみなされていた。先進国経済が低迷する中、中国やブラジルが世界経済をけん引すると期待されていた。
しかし、投資家は一転、慎重になった。原因は、米量的緩和の縮小から、インドやブラジル、トルコ、インドネシアで予定される選挙まで、いろいろある。加えてウクライナやタイの反政府デモやエジプトの治安悪化も投資家センチメントを冷やした。
前週、トルコ中銀が通貨防衛へ大幅利上げに踏み切ったが、投資家の不安は払しょくされず、リラはすぐに下げに転じた。
米国で2番目に多く取引されているiシェアーズMSCI新興国市場上場投資信託(ETF)
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、1月29日までの1週間に新興国株に投資するファンドからは、2011年8月以来最大となる64億ドルが流出した。
新興国債券も、投資家やアナリストは不安定と指摘する。
モーニングスターの社債ストラテジスト、デビッド・セケラ氏はインターネットでの会議で「新興国債券はかなり不安定になっており、よほどリスク許容度がある投資家でなければ勧められない」と語った。
<ブラジル投資は吉か凶か>
今年、多くのファンドを不振に陥らせているのが、ブラジル。Tロウ・プライスの中南米ファンド
しかし、運用担当者にブラジル投資を縮小するムードは感じられない。
Tロウの中南米ファンド運用担当者ホセ・コスタ・バック氏は「13%、14%、15%下落しても、自分の運用スタンスを維持する。自分は長期的視点で運用している」と述べ、現在保有する株の多くを少なくとも3年は保有し続ける予定としている。
ブラックロックのランダーズ氏も、同様な考え。売り圧力がある時に投資の機会があるとみている。同氏はロイターへの電子メールで「長期投資家にとって、割安な株を買うチャンス」と述べ、ブラジルの資源大手ヴァーレ
ブラジルについては、老朽化したインフラ、高インフレ、投資家マインドを冷やす政府の介入などの懸念要因もある。
ランダーズ氏は、ブラジル経済の著しい回復は、10月の大統領選挙まで見込めないとみている。
PIMCOのグローバル・ポートフォリオ運用統括責任者、スコット・マザー氏もまた、下げ相場はチャンスとみている。同氏は5日、ツイッターで「新興国債券の無差別な売りと先進国資産のパニック的買いが治まってきた。割安な資産に投資する投資家が動く時だ」とつぶやいた。
ドレイファスとフィデリティはコメントを控えるとした。
不振なのは中南米に投資するファンドだけでない。ロシア、中国、欧州の新興国などに投資するファンドも今年、9%かそれ以上下落している。
ヘッジファンドは、不透明な経済見通しを理由に多くが新興国投資を縮小しており、この局面を上手く乗り切っているようにみえるが、一部は打撃を受けている。ブレバン・ハワード氏のエマージング・マーケッツ・ストラテジーズ・マスター・ファンドは、1月24日時点で1.6%のマイナス。15%のマイナスだった前年からさらに運用が悪化している。
<好調なファンドも>
そんな中でもベンチマークを上回る成績をあげているファンドもある。アシュモア・エマージング・マーケッツ・フロンティア株ファンド
マクロファンドでは、米ドル高を予想したファンドが好調だ。
ファロ・マネジメントの旗艦ファンドは1月17日時点で2.2%のプラス。
通貨に投資するファンドの中にも好調なファンドがある。ボストンに拠点を置くP/Eインベストメンツのファンドは1月に約10%上昇したとされる。
ウィルミントン・トラスト・アドバイザーズの投資ストラテジスト、クレム・ミラー氏は、警戒姿勢をとる。「新興国市場については、パニックが大きな影響力を持つ」と述べ、新興国売りはまだ終わらないとみている。
(Luciana Lopez、Tommy Wilkes記者 翻訳:武藤邦子 編集:宮崎亜巳)
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