上皇さま、知られざる「企業ご視察」の内幕 数十人の中小企業を回られることもあった

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(デザイン:杉山 未記)

今年4月末に退位された上皇陛下。平成の時代は阪神淡路大震災や東日本大震災など大規模災害も多く、精力的に被災地を回り、被災者を慰められた。また、太平洋戦争で命を落とした人たちを慰霊するため、国内にとどまらず海外にも足を運ばれた。国民とともに歩む皇室を実践されてきたのが、「平成流」だった。

『週刊東洋経済』は9月9日発売号で「いま知っておきたい 天皇と日本史」を特集。有力学者による歴代天皇の研究と現代の天皇・皇室論の2本立てで、その歴史を振り返りつつ、現代の天皇像を追っている。

企業視察は大企業から中小企業へシフト

天皇在位時、上皇さまの企業視察にも大きな変化があった。企業視察は、1年間に1~2社(たまに3社)のことが多いが、その視察先が大企業中心から中小企業へとシフトしたのだ。

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宮内庁のサイトには「企業ご視察」というリストがある。初めての企業視察は、1990年の旭硝子(現AGC)の京浜工場と中央研究所(横浜市)だった。その後は、東京電力、花王、日産自動車、荏原製作所、石川島播磨重工業(IHI)、NECなど大企業が並んでいる。

ところが1999年ごろから、中堅、中小企業が中心となっていく。1999年に訪れた結晶化ガラスメーカーの岡本硝子(千葉県柏市)は従業員200人程度(当時)、このときは未上場だった。この年、もう1社視察したプラスチック加工の山下電気(東京都品川区)も同規模。これ以降、東日製作所(東京都大田区)、トックベアリング(東京都板橋区)、スタック電子(東京都昭島市)と中小企業が多くなっていく。

訪問先は経済産業省が複数の候補を宮内庁に推薦し、その中から選ばれる。宮内庁の判断基準は不明だが、経産省の候補選定にはいくつかの傾向を見て取れる。

それは、

① 独自技術や独創性のある製品を持つ。サービス系より製造業が中心
②経産省や都道府県が後押しする中小企業対象の表彰制度やものづくり関連の賞で受賞歴がある
③首都圏の場合、皇居から車で1時間以内のアクセスが可能(実際は高速道路を利用して30分前後が多い)

といった点だ。

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