30代が将来もらえる年金は今より20~30%減る 若い世代は、年金をどれだけ当てにすべきか

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アルゼンチンの外貨準備急減を報じる『日本経済新聞』(9月3日、朝刊)に印象的な文章があったので引用する。

「アルゼンチンの債券は高い利回りを得られるとして、7月末時点で、フランクリン・テンプルトン、ブラックロックなど大手機関投資家がファンドに組み入れていた」

実名を挙げられた両社には気の毒なことだが、どちらの会社も、グローバルな投資を行う文句なしに一流の運用会社である。だが、プロのファンドマネジャーにも外国の国債や通貨の先行きはわからないのだ。彼らが新興国国債などに投資できる理由は、1つには分散投資ができるからその一部として投資できるのであり、もう1つには他人のお金だからだ。

もっとも、外国の国債の利回りや通貨の先行きなどをピタリ、ピタリと当てるような判断力を持っている人がいたら、もったいなくてブラックロックになど勤めていられない、というのも一方の真実だ(世界最大の運用会社だとしても、だ)。ただし、この真実に該当する個人が実際にいるとは思えない。

黒田総裁の発言でバレバレ、円高警戒を緩めるな

為替レートは各国にとって悩ましい。

アメリカの場合、じわりと進んでいるドル高が、景気の見通しを陰らせている。ユーロ、人民元、イギリスポンドなどの主要通貨に対して、ドルは年初から4〜5%の上昇を見せている。

9月4日に発表されたアメリカ製造業の景況感指数は3年ぶりに「不況ライン」とされる50を下回った。今後ドナルド・トランプ政権からFRB(連邦準備制度理事会)には、一層の利下げに対して期待を向けられることになるだろう。おそらくFRBは次回のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会、9月17、18日)で一気に0.5%の利下げは行わず、0.25%単位の利下げで様子を見ることになるだろうから、一気にドル安・円高にはならないとしても、今後、円高に向けた警戒が必要だろう。

こうした中で、日本円は年初来アメリカドルに対して3%程度値上がりしている。「2%のインフレ目標」を達成するためには、これ以上の円高を避けたいところなのだが、その手段が難しい。

「一層の長期金利低下を容認するのではないか」「短期金利の誘導目標を引き下げてマイナス金利を深掘りする」といった予想があるとしても、いずれも低下幅に限界が見えていて、民間経済に対する効果は、投資の増加よりも現金(および普通預金)保有の増加につながるだけで、効果が乏しいだろう。

ETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)の買い入れ増額や、将来の政策金利を示唆するフォワードガイダンスの変更といった手段もあるが、為替レートにも景気にも大きな効果はなさそうだ。

黒田東彦日銀総裁の情報発信としては「必要があれば躊躇なく追加の緩和を行う」と言い続けるしかないのだろうが、そう言い続けていること自体が「躊躇」にほかならないという構図がだんだん見えてきた。日銀が単独でできる有効な緩和策は見当たらない。

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