1回3万円、中国人が「銀座の美容院」に通うわけ 日本でやりたいこと上位にヘアカット急浮上

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こうしたインバウンド需要を積極的に取り込もうとしているのが、ヘアサロン「モッズ・ヘア」の運営などを手がけ、ジャスダック上場のエム・エイチ・グループだ。2015年に中国系ファンドに買収され、2017年に中国出身の朱峰玲子氏が社長に就任した。

2017年に社長に就任したエム・エイチ・グループの朱峰社長(撮影:今井康一)

同社は現在、国内で直営サロン15店、フランチャイズのサロン48店を運営している(2019年6月末)。そのうち、銀座や新宿といった中国人観光客がよく訪れるエリアでは、通訳などの中国人対応を強化している。

朱峰社長は「2015年に中国人による『爆買い』ブームが起きたときに、次に来るのはサービス事業だとひらめいた。(それ以降)中国人観光客の対応を強化した(している)」と話す。

通訳セット付きのコースで3万~5万円

中国人観光客の間では美容整形のニーズも高まっている。そこで、医療ツーリズムを手がける医療コーディネーター運営会社や旅行会社8社(7月末時点)と提携し、中国人観光客を紹介してもらっている。

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口コミや友人の紹介などを通じてエム・エイチ・グループを知り、直接同社に問い合わせてくる客も多い。冒頭に登場した親子は、まさに直接のやりとりで日程を調整した。

中国人観光客用に、わかりやすいセットプランも用意している。カット、パーマかカラー、トリートメント、頭皮マッサージのセットで3万2400円。パーマとカラー両方が付くと、5万4000円になる(いずれも税込み、中国人スタッフによる通訳サービス付き)。高額な値段設定にもかかわらず、直営店合計で月に20人以上が利用することもあるという。

エム・エイチ・グループ以外にも、中国人観光客を受け入れる美容院は大都市圏を中心に増えている。一方で、多くの美容院では受け入れ態勢に課題が多い。朱峰社長は「時間どおりに客が来ないこともある。中国人の生活習慣に合わせて対応するのは難しい」と指摘する。通訳の中国人スタッフを確保するのも、決して容易ではない。

中国人観光客の美容院人気は当面衰えることがなさそうだが、はたしてどこまで需要を取り込めるか。美容院側の臨機応変の対応が求められる。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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