新手の国外不正送金「マネーミュール」の闇 求人サイト応募でいつの間にか資金洗浄に加担

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甘い文句に要注意

マネーミュールを仕掛ける犯罪組織は、求人サイトや電子メールで運び屋を勧誘している。求人への応募者が生活に困っていることを見透かしているからだ。栃木の事件で、何度も個人情報の提供を求めたのは、運び屋として自分たちの指示に忠実に従う人物であるかどうかを確認していたのではないかとみられる。

栃木や愛知の事件は、マネーミュールの氷山の一角にすぎない。

ネットバンキングの不正アクセスを通じた不正送金事件は拡大しており、マネーミュールも増加している。被害額は昨年1月から11月までの間に全国で2億6000万円に達した。送金先は、ロシア、ウクライナ、トルコ、ポーランドなどが多い。

足がつかないような仕組み作りにも余念がない。

ネットバンキングに不正アクセスする場合、IDやパスワードを入手するために、金融機関などの正規のサイトやメールを装うフィッシングを利用したり、パソコンにウイルスを仕込んだりといった手法が使われる。被害者が自分の預金が盗み取られた後に、自分のパソコンを調べようとしても、感染したウイルスが時限爆弾のような機能を持っていて、PC内のデータが跡形もなく破壊されてしまうこともあるという。

資金洗浄をしたい犯罪組織にとって、運び屋は使い捨てられる都合のいい存在だ。「海外に送金するだけで高額な報酬を得られる」との甘い文句に誘われて、実際に報酬を手にしたとしても、犯罪組織に口座を貸したという情報は残る。それによりマネーミュールと特定され、結局は罪の代償を払わされることになる。

「甘い話には要注意」。これが、新手の犯罪を食い止めるための第一歩であることは間違いない。

週刊東洋経済2014年2月8日号〈2月3日発売〉 核心リポート04)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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