「子供がいても保険は不要」と怒る夫の説得法 さすがに「無保険」状態は放置しない方がいい

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実は、夫が死亡してから、妻の「収入」は遺族年金だけではありません。まず老齢基礎年金があります。今回の妻は年金未納期間があり、老齢基礎年金は現段階で年間60万円。90歳までに受給する老齢基礎年金は約1500万円です。

一方、現在パートで100万円の年収がありますが、60歳まであと19年働くと1900万円になります。これに会社員の夫の死亡退職金もあります。退職金1500万円と見積もると、夫Aさんが亡くなったとき、妻B子さんの「収入」の合計は9402万円となりました。

一方「収入」だけでなく、夫が死亡してからの「支出」も計算しておく必要があります。現状で、住居費以外の生活費についてB子さんに確かめたところ、年間360万円ほどでした。下の子どもが大学を卒業して自立する22歳まであと15年ありますが、それまでに360×15=5400万円の生活費がかかります。その後は妻1人の生活になりますが、生活費が減って月に20万円程度とすると、90歳までで合計8160万円となります。

住居費については、住宅ローンには団体信用生命保険がついていましたが、ローン以外の修繕管理費や固定資産税が今から90歳までで3430万円。現状では教育費の準備もできていないため、子ども2人で600万円以上、葬式代や車買い替えでも一定額はかかりそうです。これらを合わせると、夫が亡くなってからの「支出」は、合わせて1億8090万円になりました。

「遺族が困る金額」と「保険の必要保障額」

この収支(収入-支出)を計算すれば、夫に今、万が一のことがあった場合、「遺族(妻と子ども2人)が困る金額」が判明します。

9402万円-1億8090万円=-8688万円

不足して困る金額は8688万円です。

そして、この「不足して困る金額」をもとに、保険で賄うべき必要保障額をはじき出していきます。

B子さんに現在加入している死亡保険を聞くと、終身保険300万円と収入保障保険が2640万円相当とのことでした。今の保険のままだと、5748万円の保障が足りないことがわかります。もちろん、生活の条件を変えることによって、この額は変わってきますが、夫Aさんに万一のことがあっても困らないように、5748万円を基準として賄えるよう、保険を見直すことになりました。

この額の大きさには、かなりの賛否があると思います。「ここまで必要ない!」という人も少なくないでしょう。しかし、大事なのはこうして数字を出すことです。具体的な不足額、すなわち必要保障額を知ると、保険嫌いの人でも、加入や見直しを考えようとするものです。生活費など「支出」の見直しから貯蓄を増やしていくことができれば、必要保障額を下げたり、保険を減らしたりすることも可能でしょう。

今回のケースでは、こうした金額をはじき出す過程を詳細に示すことで「保険嫌いの夫」も、保険が役立つことも知っていただけると思います。

塚越 菜々子 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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つかごし ななこ / Nanako Tsukagoshi

税理士事務所に10年間勤務。これまで延べ500件以上の確定申告のサポートと、独立後は年間およそ200件の家計の診断・アドバイスを行う。主に30代の共働きの女性を中心に、子育て世帯でも無理のないライフプラン設計や家計管理法を伝えながら「お金に支配されない生き方」を提案している。女性起業の税務や経理に関するセミナーや、NISAや確定拠出年金を利用した「普通のママ」ができる資産運用セミナー等を年間40回以上開催。「確定拠出年金相談ねっと」認定FP。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動している。公式サイト

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