日韓不和など「どうでもいい」トランプの関心 アメリカ政府高官とトランプの考えは違う

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一方、日本政府は、韓国との軋轢についてはトランプ大統領を利用したがるが、貿易や北朝鮮といった深刻な事案では、アメリカの政策決定の混乱は大きな問題につながりかねない。

北朝鮮による最近の短距離・中距離弾道ミサイルの一連の実験は、トランプ大統領と安倍首相の見解の間に横たわる明白で重大な間隙を露呈した。日米両国の国防当局者が知悉しているように、北朝鮮は、韓国と日本国内の標的、特にアメリカ軍基地を、ミサイル防衛システムを回避したうえで攻撃するように設計したシステムのテストを行っている。

日米「見せかけの調和」がはぎ取られた会見

トランプ大統領やポンペオ国務長官を含む政権幹部たちが、日本や韓国(そして両国のアメリカ軍基地とアメリカ軍部隊)までしか到達しない北朝鮮の長距離ミサイルや短距離ロケットをアメリカへの脅威と見なしていないことは明らかである。日本政府筋は全力を尽くして日本国民からこの現実を隠そうとしているが、G7での共同会見記者が「見せかけの調和」をはぎ取ってしまった。

「短距離はシンゾーの領域ですね」と、トランプ大統領は言った。「このようなミサイルはたくさんの国で試射されている」とトランプ大統領は続け、北朝鮮によるミサイル発射実験は「明確な国連安保理決議違反」との安倍首相の厳しい非難に同調することはなかった。

安倍政権はこの見解の相違を隠そうと全力を尽くした。トランプ大統領の発言は、「北朝鮮が非核化の交渉の再開に応じるような状況を構築しようという大統領の意図の表れであり、もちろん非核化こそが最重要課題である」と安倍政権高官は語る。北朝鮮とのアメリカの交渉が期待通り決裂した場合、トランプ大統領は立場を変えるだろうというわけだ。

現実的には、トランプ大統領は不完全な非核化の取り決めを金正恩朝鮮労働党委員長と容易に結び、核弾頭を装備したミサイル戦力で日本を攻撃する能力を北朝鮮に保持させたままにしてしまう可能性がある。トランプ大統領が金委員長と再び首脳会談を行わないよう望んでいるボルトン大統領補佐官をはじめとするアメリカ政権内の高官たちが、安倍首相にこの問題を大統領に持ちかけるよう密かに勧める理由はこれである。

日米間の貿易協議でも、トランプ大統領とトランプ政権内高官たちの見解の相違が深刻な問題になっている。

トランプ大統領と安倍首相がG7首脳会議で発表した原則的合意は、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー氏に率いられた両国交渉チームのひたむきな努力の成果だった。アメリカによる日本の農産物市場への大々的な参入を潜在的に可能とすることの引き換えに、アメリカに輸入される日本車への関税圧力の強化や日本車輸出数の制限については譲歩するというギリギリの合意である。

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