1000億円増資で神戸製鋼は勝ち残れるか 財務体質改善と成長分野への投資という二兎を追う

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神戸製鋼は鉄鋼に加え、建機やクレーン、アルミニウム製品など多角的な事業展開に特徴がある。反面、粗鋼生産量は新日鉄住金の4800万トン、JFE の2900万トンに比べ、神戸製鋼は760万トンにとどまる。有利子負債についても、前2013年3月期末で9200億円に達している。デットエクイティレシオ(純資産に占める有利子負債の比率)は1.75倍と、新日鉄住金の1.06倍、JFEの1.02倍に比べ、突出している。

1985年3月期から今期までの30年間で神戸製鋼が最終赤字に陥ったのは11回と、新日鉄住金(旧新日鉄)の7回を上回る。当時の自己資本比率は1ケタ止まりで、2ケタに達したのは1988年のことだ。2000年代半ばに旧新日鉄やJFEが2000億~3000億円の純利益をたたき出し、財務体質を改善させたのに比べ、神戸製鋼は数百億円を稼ぐのがやっと。自己資本比率が20%を超えたのも2006年3月期だった。

神戸製鋼のある幹部は「財務体質はよくしていきたいが、闇雲に借金を返済しても成長はできない」と語る。増資に踏み切れば、自己資本比率をもう一段改善できるのに加え、調達資金の一部を有利子負債の返済を充てることで、資金の効率化が図れる。成長分野への投資とともに、長年の課題を払拭できる狙いがあったとみるのが自然だ。

成長の“絵”を描けるか

藤原副社長は増資に関するコメントを避けた

問題は、大規模な増資を行った先に神戸製鋼の新たな戦略を描けるのか、という点にある。現在進めている中期経営計画では、神戸製鉄所を閉鎖する一方で、加古川製鉄所への集約を進めている。「“生き残り”から“勝ち残り”に向けた施策だ」と会社側は説明する。

中国の大増産を受け、海外の鋼材市況は低迷している。その一方で主要顧客である自動車メーカーは海外展開を活発化させており、神戸製鋼もこれに対応した設備投資を迫られている。今回の増資を奇貨に、成長戦略を着実に実行できるのか。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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