ジャカルタが日本製「中古電車天国」になるまで 「中古車両輸入禁止」で今後はどうなる?

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とはいえ、中古車両の導入も容易ではなかった。1つのネックは、日本側の廃車時期とインドネシア側の導入計画の合致というタイミングの問題だ。日本で廃車が始まる数年前にはインドネシア側で導入を検討、予算付けを行って鉄道会社と接触していなければならない。

ジャカルタで10年強活躍し引退した元JRの103系車内。最後までピカピカに磨き上げられていた。中古車両導入は古いものを大切に使う意識付けにも役立った(筆者撮影)

日本国内で新型車両導入と旧型車の置き換えが公表される際は、旧型車が廃車解体か、それとも譲渡対象となるかはある程度決まっている。しかし、日本の鉄道の車両置き換え計画をインドネシア側が知る由もない。当時は日本側から車両を売り込んでくる時代ではなかった。つなぎ役を果たしたのは元日本留学生など、両国に縁が深い人々の水面下での活動である。

ほかにも、短期間にある程度まとまった数が調達できること、さらに搬出までの間、譲渡車両を留置させる余剰スペースの存在という物理的な問題もある。輸出された車両がいずれも首都圏の大手鉄道会社を出自としているのには、このような理由がある。

民間主導で進んだ中古車輸出

従来のインフラ整備がODAであったのとは対照的に、近年の中古車両導入は民間主導で実施されてきた。その中でも東急はKAIと直接契約を行い、メンテナンス教育や保守部品の供給なども実施していた。しかし、インドネシア向けの廃車が出なくなったことから、これらの支援も止まってしまったのは残念なことである。

元東急電鉄の8000系。冷房付きで、本来ドアが閉まるはずの中古車両もかつては鈴なりの乗客を乗せていた

2010年以降導入が続く東京メトロやJR東日本の車両は輸送業者が仲介しているものの、直接契約に近い形態を取っているため、曲がりなりにもサポート体制が構築された。しかしながら保守部品の調達は困難を極め、中古車両同士で「共食い」するかのごとく、一部車両を廃車にして、部品を確保して運行を続けてきた。

廃棄物輸出と揶揄されることもある中古車両の海外輸出だが、センセーショナルな言い方ではあるものの、とくに2010年以前に導入された車両に対してはあながち間違ってはいない。売却後の保証はしないという前提条件付きで、いわば車両ではなく中古機材として海を渡っているためだ。

よって、インドネシア側が故障した部品を発注したいときに窓口がない。部品製造会社に問い合わせても、「※※鉄道の▲▲形式専用に設計、販売している製品のため、※※鉄道を介して注文して下さい」となる。これは鉄道会社が各部品を各社専用の品番で指定しているからである。しかし、鉄道会社としても保証なしで売却した車両であるため、積極的には対応しなかった。

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