ジャカルタが日本製「中古電車天国」になるまで 「中古車両輸入禁止」で今後はどうなる?
ようやく日の目を見た中古車両であるが、今再び岐路に立たされている。インドネシア政府は2020年以降の中古車両輸入禁止を掲げているからだ。昨年にはKCIが自ら新型車両設計に関わるコンサルタント業務の入札を行った。あくまでも国営企業省傘下のKAI子会社たるKCIは、政府指針で国産化率向上を目指す国営企業省令に従わざるをえない事情がある。
しかし、国営車両製造(INKA)製電車の信頼性は低く、KCIも国営企業省からの圧力をあの手この手で交わしてきた。運輸省が策定した「車齢30年規制」に対しても、「更新後30年」という解釈で通している。東京では今後もしばらく大規模な車両更新が続くとみられ、一部の鉄道会社がKCIに車両を売り込んでいるのも確認されている。だが、政府方針がある以上、KCIとしてもはっきりした返答が出せない状況だ。
ただ、INKAは現在、アジアやアフリカ向けの輸出車両製造案件を抱えているほか、国内各都市のLRT(Light Rail Transit)、さらにはKAIの中距離特急用気動車の製造も控えている。製造ラインはいっぱいで、KCI向けの新車製造の余裕がないという事情もある。中古車輸入特例の延期処置がなされるのか、注目されるところである。
既存の中古車「延命」をビジネスに
KCIとしても、当初の目標であった輸送人員や保有車両数を達成しつつあり、従来のような大量な車両購入はできなくなる。
関係者によると、KCIは来年度の政府補助金を受け取らない、つまり各省庁からの介入を阻止するかのような動きも見られているという。よって、引き続き日本からの中古車両を導入したとしても経年車の置き換え用途をメインに少数に限られ、保有車両数は1000両強で頭打ちとなる可能性が濃厚だろう。
インドネシアに限らず、世界的にも日本の中古車両が置かれている状況は同じである。途上国とはいえ、中古車では満足しない時代になりつつある。しかし、価格面から日本製の新型車両を売り込むことも難しい。
このマーケットを守る方法はただ1つ、既存車両を少しでも延命することだ。部品供給ルートの構築や現地の鉄道人材教育はもちろんのこと、車両の機器更新などの抜本的対策がなされてもいい時期である。中古車がまだまだ使える車両であると政府レベルで認識してもらうこと、そして車両や機器類の「新古品輸出」という新たなビジネスが確立されることが大団円ではないかと筆者は考えている。
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