ジャカルタが日本製「中古電車天国」になるまで

「中古車両輸入禁止」で今後はどうなる?

今日では「中古車両天国」として、あまりにも有名になってしまったジャカルタであるが、その背景にはODAのマスタープランに描かれている将来像と現実があまりにもかけ離れていたことがある。ODAの下請けコンサルタントのほとんどは建設コンサルタントであり、鉄道コンサルタントと呼ぶには程遠いのだ。

現地事情を考慮していない設計も散見される。郊外駅の駅前広場は駐車場となってしまい、道路は大渋滞。長距離列車の起点駅に機関車付け替え用の設備を設けなかったために通勤電車の高頻度運行が妨げられている。需要予測を超過したホーム上はいつ接触事故が起きるかわからない状況……などと枚挙にいとまがない。

都心の高架駅は12両対応で造りながら、2008年に東南アジア最大の車両基地として完成したデポック電車区は検修設備が8両にしか対応していないなど、各プロジェクト同士にも整合性がない部分もある。「開発援助など、日本で先細りの公共工事を海外でやっているにすぎない」と、当時の在留者に言われたのにはなるほど、と納得してしまった。鉄道インフラは造って終わりではない。

もちろんアジア金融危機の影響もあるが、それを抜きにしても中古車両の導入なしで既存国鉄線(インドネシア鉄道:KAI)の通勤鉄道化は達成できなかったであろう。

切り札だった日本の中古車両

2000年代初頭、稼働車両が減少する中で、鉄道需要はますます伸びるという悪循環に陥っていた。一方で、生活水準が飛躍的に向上し冷房が当たり前となった時代に、非冷房で「汚い・危険・暗い」という劣悪な車内環境の電車は敬遠され、中産階級以上の鉄道離れも加速していた。

その状況を打開すべく「切り札」として導入されたのが日本の中古車両である。価格は輸送費を含めても新車の10分の1ほど、かつ冷房付き、中古でありながら新車同様というのは、高品質な車両の大量導入を進めたいインドネシアにとって、まさにうってつけであった。

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