アメリカに最先端人材が簡単に集まる根本理由 就労ビザが抽選制でも創造的な人材が集積
もちろん、世界中の人材にとっていいことばかりではない。現政権の自国民保護傾向を不安に思う人も少なくない。そしていちばんの難点は在留ビザである。アメリカの就労ビザは、「抽選制」だからだ。学校を卒業してまず分野によって1、2年働ける「OPT」という在留資格を申請する。その後、本当の就労ビザである「H-1B」を申請しないといけないが、雇用側がスポンサーになることや抽選制などにより、簡単には取得できない。
大学卒の場合、2020年度の抽選確率は32%。大学院卒の場合は別枠での抽選機会もあるため50%程度になる。アメリカ国籍やグリーンカードを持たない人にとって就労ビザ取得は難点である。H-1Bを取得した場合でも、延長して最大6年間しか働けないので、グリーンカードの取得は本当に必死だ。
外国人という概念はないが、就活する際、グリーンカードを持ってないことは結構不利な点であるのも認めざるをえない。近年、大手IT企業の中には、わざわざカナダに拠点を作り、当選できなかった社員に一時的にカナダで働いてもらい、次年度の抽選にまた挑戦する仕組みも作っているところもある。
ちなみに現在大手企業の多くは、中国国内で働いているエンジニアを採用し、働いてもらうケースが増えているようである。勤務経験があるし、能力も高く、勤勉なのでアメリカでの現地採用より「コスパ」がよいわけだ。国境を超えた人材奪略戦だと感じる。
一方、日本では就労ビザは抽選制でないので、外国籍の社員にとって安心できるところだ。
イノベーション促進は人材獲得がカギ
これからのイノベーション促進は、人材の獲得がカギだといえる。「英雄の出身を問わず」、世界中の人材に集まってもらわないと、日本では少子高齢化を乗り切れないだろう。そして同質性が高い日本社会では、変革・イノベーションを起こせる「外部の」人材の誘致は不可欠である。
国籍より実力で評価し、一般社員より専門家として活躍してもらうべきだろう。働き方改革の推進で、(ワークライフバランス実現といった曖昧なやり方を越えて)プライベートタイムを徹底的に尊重するとともに、企業風土をオープンにしていけば、文化とおもてなしで好感度が高い日本も、人材争奪戦に勝利する確率が高まるのではなかろうか。
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