貧困でも「自ら専業主婦を選ぶ」日本女性のなぜ 4分の3の世帯に「やむをえない理由」がない

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中野:すでに共働き世帯が専業主婦世帯の2倍近くになりましたが、と言っても、「共働き」の半数以上は子育てなど「主婦」の役割を果たしながら、空いた時間で働いているパートタイマーです。

私がインタビューした女性の中にも、子どもとの時間を優先させて働き方を変えるケースが多く見られました。ただ時間的制約があることなどによって報酬などの条件は悪いことが多く、男女賃金格差にもつながっていますよね。

周燕飛(しゅう えんび)/1975年、中国生まれ。労働政策研究・研修機構(JILPT)主任研究員。大阪大学国際公共政策博士。専門は労働経済学・社会保障論。主な著書に『母子世帯のワーク・ライフと経済的自立』(第38回労働関係図書優秀賞、JILPT研究双書)など。3児の母(撮影:尾形文繁)

既婚女性の3分の1がキャリア主婦で主に仕事をしている人たち、3分の1が育児や家事のかたわら働いているパート主婦で、残り3分の1が専業主婦と見ていいと思います。

そのうち、パート主婦を準専業主婦という呼び方をしてもいいと考えています。その意味では、専業主婦モデルはすでに夫婦共働きモデルにとって代わられたという世の中の認識は、大きな誤解だと思います。「専業主婦」モデルの根幹である男女役割分業は、今も3分の2の家庭で続いています。

労働力調査を見ると、女性の就業率は高まっていて、欧米諸国と肩を並べはじめているのですが、中身をみると大きく異なります。アメリカやフランスではフルタイムで働いている女性が多い。一方、日本では、女性のフルタイム割合は就業率ほど上がっていないのです。

新規に増えた女性の労働供給が、パートタイムに偏在しています。そのため、訓練機会もキャリアの見通しもないまま低技能・低賃金で働く、いわゆる「非正規のわな」に陥っている女性は一向に減る気配がなく、男女間の賃金格差が解消されません。

パート主婦世帯の貧困はなぜ起こっているか

中野:女性を非正規などの周辺労働に追いやることで雇用の調整弁とし、一方で家事やケアなどの家庭責任を女性に任せることで男性の無制限な働き方が成り立つ……こういう構造になっているということを拙著でも書きました。男女賃金格差はこのような構造から何重にも要因が積み重なっているように思います。

先ほどおっしゃったパート主婦世帯の貧困率が高まっているというのは、妻が働いて共働きでも、収入が低く困窮してしまうということですね。一方、貧困世帯でも妻は専業主婦、というケースもある。

:パート主婦世帯では、夫の収入が少なく、妻の収入を足しても貧困から脱出できないということが起こっています。一方、専業主婦世帯については、4分の1がやむをえない理由で貧困の状況にありながら働きに出ることができていません。

保育園の待機児童になったとか、メンタルの問題を抱えているとか、若くして産んだ娘が妊娠して30代で孫ができて世話をしないといけないといった、家庭的な事情で働けないなどのケースもあります。残りの4分の3は自ら選択して専業主婦になっています。

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