現地ルポ、日立「イタリア鉄道工場」の最深部 設備や技術力は?日本庭園や食堂もすごい

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工場見学を一通り終えた頃、ちょうど昼食の時間となった。同社の社員食堂へ案内されて驚かされたのは、ちょっとしたフードコートかと思うような大規模な食堂だったことだ。品目も、定番のピッツァやパスタはもちろん、メインディッシュを注文することもできる。ピッツァにいたっては、本格的な窯が用意されており、日本のちょっとしたイタリアンレストランをも凌駕するほどの充実ぶりだ。

さすがイタリアと感心したが、これらの施設は昔からあったものの、日立に買収されてから大改修を行ったのだとか。福利厚生の充実は、社員の士気を高めることにもつながるが、実際これだけ充実した社員食堂があったら、さぞや気分よく仕事ができるだろうと、少々うらやましく思った。

欧州市場開拓の拠点として

日立製作所は英国への進出を果たして以来、都市間高速鉄道計画(IEP)車両866両など大規模な受注に成功。イングランド北部のニュートン・エイクリフに新工場を建設し、車両の製造を行ってきた。ただ、受注は英国内のみにとどまっていた。

転機が訪れたのは2015年、旧アンサルドブレダの買収であった。当時は、信号システム大手のアンサルドSTSが目当てで、アンサルドブレダはその抱き合わせで押し付けられた、などと揶揄する報道も見られたが、それはとんでもない見当違いだ。一部の事業失敗で業績が悪化していたものの、もともと非常に高い技術力を持ったメーカーであり、欧州大陸に生産拠点を手にしたことは、欧州市場での飛躍を目指す日立にとって非常に大きな一歩となった。

日立はすぐに、旧アンサルドブレダの工場設備などに大規模な投資を行い、IEP車両製造のためオーバーワークとなっていた英国工場生産分の一部をイタリアへ割り振ることで、工場の稼働率を上げた。当初はイタリアで製造することに懐疑的だった英国の鉄道会社も、ピストイア工場を視察してその技術水準の高さを目の当たりとし、すぐに生産移管を許可した。今後も日伊英の3拠点をうまく利用しながら、効率のいい生産を進めていくことだろう。

ロックの生産開始は、日立の欧州戦略における、まだほんの第一歩でしかない。今後も、さらなる欧州市場の開拓を進めていくであろう日立だが、ピストイア工場がその欧州戦略の中枢を担うことになるのは疑いようもない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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