日本製紙が豪大手製紙メーカーを買収、海外拡大へ第一歩
国内製紙2位の日本製紙グループ本社が、オーストラリア3位の製紙メーカー、オーストラリアンペーパー(AP)の買収を発表した。買収額は約360億円。グループ中核の日本製紙が5月をメドに、AP社の4工場のうち主力2工場(売上高550億円、税引前利益18億円)を買収する。AP社は豪州の印刷・情報用紙で25%のシェア、そのうちコピー用紙では60%のトップシェアを誇る。
国内の製紙各社にとって海外市場開拓は、将来の成長のために不可欠な選択肢といえる。国内の紙需要は長らく対前年比1~2%の変動幅に収まっていたが、今年は景気悪化の影響で、チラシやカタログなど広告用印刷物を中心に需要が減速。日本製紙連合会の統計では、紙・板紙の内需合計は2008年で前年比3%減。さらに09年は同8%減となる見通しで、「過去30年で経験がない」(大手紙代理店)ほどの市場縮小に直面している。
一方、供給過剰は深刻さを増している。07年から大王、日本、王子、北越と大手製紙各社が相次いで最新鋭機を稼働させたが、その受け皿として期待していた海外輸出は、昨秋来の円高で急ブレーキ。在庫調整のため年明けから王子、日本製紙グループが塗工紙で各50%の大幅減産に踏み切った。だが需要回復には時間がかかりそうで、内需依存型からの脱却は待ったなしの状況となっている。
海外比率30%が目標
国内最大手の王子製紙はすでに海外市場の深耕へ舵を切っている。04年には中国上海近郊の南通で、総投資額2000億円の大型工場プロジェクトが始動。10年秋の稼働を予定する。一方の日本製紙グループも05年に発表した中期ビジョンで、15年の海外売上高比率30%を目標に掲げた。だが、その後台湾やタイなどのメーカーと資本・技術提携を進めたものの、本格的なM&Aは今回が初めて。
オーストラリアの紙市場は洋紙・板紙合わせて390万トンと、日本の1割程度。1人当たり紙消費量も日本の8割程度と高くない。だが日本とは逆に、市場は年平均3%程度の拡大傾向。国内生産の割合も30%で、大半を高コストの輸入紙に依存する。それだけに「生産を伸ばす余地はある」(鹿島久仁彦・経営企画部長)。AP社の買収で海外売上高比率は約12%から15%に高まる見通し。15年に30%の目標に向け、ようやく第一歩を踏み出したといえる。
「今後もASEANを中心に、M&Aを積極的に推進する」(同社)と内需依存からの脱却を図るが、業界には国内の設備過剰という課題も残る。今後は業界再編も焦点となりそうだ。
(小長洋子 =週刊東洋経済)
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