東京電力はなぜ、賠償金を「払い渋る」のか 突然の賠償金返還請求、膨大な資料要求も

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地元に密着した農業関連企業でも、売れ行き不振による被害が現在も色濃く残っている。

「当社の場合、売り上げの大半が農業者向け。(賠償の基準がより厳格な)商工業者に割り振られたのは納得できない」(前出の山田さん)

東電の担当者は交渉の中で「決して打ち切りではない」「(個人的には)ゼロ回答は避けたい」と言いつつも、「(山田さんの希望に沿った)100点満点の回答は難しい」などと、苦しげな答弁を繰り返した。担当者が被災者と審査部門の板挟みになって苦悩する実態も浮かび上がる。

「請求通りに賠償が支払われない場合、事業継続が難しくなる。決算月の10月末には見極めを付けないといけないかもしれない」。山田さんの不安は募る一方だ。  

5750枚に及ぶ書類の提出を求められた     

「賠償の必要性を確認するため」として、5750枚にも及ぶ書類の提出を求められた農業者もいる。福島県内で花卉の栽培・販売を会社組織で営む渡部雅幸さん(48)だ。

6000枚近い書類提出を求められた渡部雅幸さん(記者撮影)

渡部さんが提出を求められたのは、「総勘定元帳」と呼ばれる経理の台帳だ。総勘定元帳の提出要請は、すべての取引の記録を見せろということにほかならない。従来、東電の担当者に決算書と一部の月次書類を渡すだけで事足りていたが、今年4月に異変が生じた。

東電の担当者が自宅にやってきて、「総勘定元帳のコピーがほしい」と言い出し、1日がかりで印刷作業に立ち会った。

「いったい何が目的でそんなたくさんの書類が欲しいのか」。渡部さんは作業量が膨大になるがゆえに、東電の担当者に何度も再考を促したが、担当者は「東京の審査部門から求められている」というだけで、きちんとした理由の説明はなかったという。

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