東京電力はなぜ、賠償金を「払い渋る」のか 突然の賠償金返還請求、膨大な資料要求も

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思いもよらぬ事態に発展したのは、それから間もなくのことだった。

5月10日、東電の福島事務所の担当者2人が山田さんの店を訪問し、驚くべき話を切り出した。「(山田さんのような)商工業者については、すでに2年分の賠償が一括して払われている。(それ以降の分については払い過ぎになっていることが判明したため)精算金のお支払いをお願いしたい」

「いったん合意して支払われた賠償を返せとは、今さら何を言うのか」。山田さんは思わず声を上げ、書類を突き返した。

東電はなぜ賠償金の返還を求めたのか

「会社が存続できないかもしれない」。そばで話を聞いていた山田さんの妻は「ショックでめまいがした」と振り返る。

合意に基づいていったん支払った賠償金の返還を、なぜ東電は求めたのか。

東電の担当者に申入書を手渡す福島県農民連(写真:福島県農民連)

8月1日、東京・永田町の参議院議員会館で、東電と政府、山田さんを支援する農業団体「福島県農民連」との間で交渉が持たれた。同席した山田さん夫妻を前に、東電の賠償担当者が理由の一端を明らかにした。

「(山田さんは)農家を相手に農業資材や農作物の種子を販売しているとお聞きしている。従来は農業と同等の風評被害があるとみなしたうえで賠償を支払ってきたが、商工業者については、すでに将来分として2倍相当の一括払い(=2年分)という賠償の方式をご案内している。(山田さんは)小売業をされていることから、(今回は)商工業の枠組みでとらえている」

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