パーソナルソングを生業にした女性音楽家の転身 米国人シャノン・カーティスの潔い生き方

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、カーティスの歩みが示唆するところは、それらはいずれもエゴにとらわれた感情であり、また自分で自分の音楽活動を責任を持って創造し成立させるための努力をやりそびれているかもしれない、ということだ。

カーティスの「現実的な」ビジネス上の創意工夫をいくつか挙げよう。

「『わたしたちの活動の大切なことは、同じ物事を大切に思う価値観の人たちのつながり。だから、その分かち合いを続けるために、連絡を取り合ったりお知らせを送ったりできるメーリングリストに参加してもらえることが有意義でありがたいことです』と参加者には毎回漏らさずはっきりと話している。

これまで多くの人と音楽を通じて出会ってきて、コミュニケーションを育み関係を築いてきたけれど、音楽を超えてわたしたちともっと深くつながりたいと思ってくれる人たちがいることが見えてきた。それで、どんなテーマであっても、そのときわたしたちが考えていることや取り組んでいることについて、深い話をするPodcastをやることにした。

週1の更新なんだけれど、1週は完全公開の回、翌週はわたしたちがPatreonというサイトを使って運営しているオンラインコミュニティーのメンバーに限定して配信する回。わたしたちの活動をサポートしてもらう「方法」や「媒体」を多様化させればさせるほど、もっと多くの人から、より多くのサポートをしてもらえるようになる」

「本来の自分」とは何かを知ることが重要だった

このように、実に懸命で手堅いマーケティングや工夫を行っているのである。音楽の腕を磨くことがすべてで、人間の価値すらも演奏のうまい下手でしか測れなくなってしまうこともままある音楽家にとっては、刮目させられる行動ではないだろうか。

最後に、カーティスのこの言葉を贈りたい。音楽家だけではなく、すべての「今日を生きる人」に。

「アーティスト人生において、アーティストとしてエゴを捨て去る意図的な決断や行動をするとき。そのときこそが、コミュニティーのなかで持続可能なキャリアの基盤となる人同士の関係を築き上げるために欠かせない、「本来の自分」をあらわにする瞬間ね。
エゴの真っただ中から自分を引っ張り出して、人にどう思われるかについてばかり考えることから離れて、人間としてできる限り自分らしく他者と関わっていくこと。それがわたしにとって大事な学びであったし、結果的にそれがうまくいくことだと明らかになる。わたしたちはそういう真の誠実な人間関係を必要としているから」

 

 シャノン・カーティス氏へのThe Entrepreneurial Musicianでの英語によるインタビューや、全文日本語書き起こしはこちらをご参照ください。
バジル・クリッツァー ホルン奏者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Basil Kritzer

アメリカ人の両親を持つ香港生まれ京都育ちのアメリカ人。1歳で来日し、日本の保育園、公立小学校に通う。「お受験」で中高一貫教育の私立校に入り、吹奏楽部に入部した際にホルンに出会う。高校卒業後はドイツ留学。エッセン・フォルクヴァング芸大ホルン科卒業。在学中は極度の腰痛とあがり症に悩み、それを乗り越えるために「アレクサンダー・テクニーク(Alexander Technique)」という欧米の音楽、演劇、ダンスの現場では広く知られ取り入れられている「身体の使い方」のメソッドを学ぶ。日本に帰国後、このメソッドの教師資格を取得。これまでに東京藝大、上海オーケストラアカデミー、大阪音大、昭和音大はじめ各地の教育機関で教えている。現在は沖縄県立芸術大学非常勤講師。尚美ミュージックカレッジ特別講師。著書に『マンガとイラストでよくわかる!音楽演奏と指導のためのアレクサンダー・テクニーク実践編』『バジル先生とココロとカラダの相談室シリーズ』(ともに学研)、『徹底自己肯定楽器練習法』(きゃたりうむ出版)など多数。ブログ:basilkritzer.jp(プロフィール写真:©学研)

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事