「野球少年」減少に映るプロ存続の危うい未来 何が日本の野球界の成長を阻害しているのか

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元サッカー日本代表の川淵三郎氏という絶対的なリーダーが、JリーグやBリーグの発足に尽力した一方、野球界では、NPBのコミッショナーも日本高等学校野球連盟の会長も極端に存在感が薄い。クライマックスシリーズから2位、3位のチームが日本シリーズに勝ち進むたび、制度のあり方が疑問視されるが、NPBのコミッショナーは何の意見も表明しない。

真夏の試合で熱中症を憂慮する声に対し、日本サッカー協会が大会/試合スケジュールの規制を行っていることと比べると、高野連の対策は大きく見劣りする。「プロアマの壁は取り払われた」という関係者やメディアは決して少なくないが、野球ファンは本当にそうだと感じているだろうか。

少子化を上回るスピードで消える「野球少年」

なぜ、野球界はサッカーのように1つにならないのか――。

各所でたびたび指摘されてきたが、1つにならない理由は明確で、そもそも運営者が異なるからだ。広く知られるように、プロ野球は読売新聞、高校野球は朝日新聞の主催で始まった。社会人野球は毎日新聞、学童野球は東京新聞にバックアップされている。

読売はプロ野球、朝日は高校野球を「社業」と位置づけ、力を入れてきた。サッカー界が1つのピラミッドで発展してきた一方、野球界にはさまざまなステイクホルダーが存在するからこそ、現在まで成長できたのもまた事実である。

ただし今、野球界はバラバラであるがゆえに、その将来を脅かしかねない難題に対し、効果的な対策を打てずにいる。深刻な問題の1つが、子どもの野球離れだ。

2007~2016年にかけて、小・中学生の野球人口は66万3560人から48万9648人と、26.2%減少(出典:全日本野球協会)。同期間のサッカー人口は51万8808人から54万9962人と6%の増加だった(出典:日本サッカー協会)。少子化の6倍のペースで野球少年は減少している。

「アマチュアがプロ野球選手をつくってくれていて、プロはそれを使わせてもらっているというのが野球界の構造です。そう考えると、野球の競技者が減るとプロ野球選手の質が落ちます。それはプロ野球に跳ね返ってくる」

侍ジャパンの事業部で働き、現在は独立して「R.E WORKS」でアスリートマネジメント事業などを手がける加藤謙次郎氏はそう語る。

アマチュアの指導は多くのボランティアに支えられ、そこから優秀な子どもたちがプロまで到達することを考えると、アマチュアの恩恵でプロ野球が成り立っているのは間違いない。子どもの野球離れが起こっていることは、プロ野球にとっても極めて深刻な問題だが、プロ野球関係者にはそうした想像力さえ働かない人もいる。

2016年末のオーナー会議で野球少年減少が話題に上がったとき、「そんなのは大した問題じゃない」と一笑に付したオーナーがいたという。プロ野球の観客動員は増え続けているため、野球少年減少を「対岸の火事」と捉えているのだ。この発言を伝え聞いたプロやアマの野球関係者は、一様に落胆の表情を見せていた。

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