「野球少年」減少に映るプロ存続の危うい未来 何が日本の野球界の成長を阻害しているのか
「お前がトップのうちに変えないで、どうするんだ? 思い切ってやれ」
1993年にJリーグの初代チェアマンとして開幕宣言を行い、その20年以上後にバスケットボールのBリーグ発足に尽力した川淵三郎氏は、2018年5月に誕生した野球界の新リーダーをそう叱咤した。
川淵氏に背中を押されたのは、全日本野球協会(BFJ)の新会長に就任した山中正竹氏だ。全日本野球協会はいわゆる「NF」(ナショナル・フェデレーション=国内競技連盟)で、サッカー界で言えば日本サッカー協会と同じ位置づけになる。
だがサッカー界と異なるのは、野球界のNFはバラバラの組織の集合体にすぎないことだ。オリンピックに出場するためにはNFが必要とされるため、1990年、日本野球連盟(JABA=社会人野球を統括する組織)と日本学生野球協会によって設立されたのが、全日本野球協会(当時の名称は全日本アマチュア野球連盟。2013年に改称)だ。
野球界に川淵三郎が入っても簡単にいかない
そうした長としての難しさを、就任から数カ月後、山中会長はこう明かしている。
「(野球界のあり方を)おかしいよねと感じている人は(内部にも)いっぱいいるんですよ。でも、それを言えば煙たがられるとか、メンバーから外されてしまう。今の野球界に川淵三郎が入ってきても、そうも(簡単に)いかんのじゃないかと僕は思う」
人気絶頂のプロ野球や高校野球だが、足元に目を移すと深刻な地盤沈下が起きている。そう遠くない将来、業界の構造が根本から変わるような事態が起こりかねない。はたして30年後、プロ野球はちゃんと興行を続けられているだろうか。子どもの野球離れに効果的な手を打ち、バッドエンディングを逃れることはできるだろうか。
人口減少に効果的な策を打てず、急激な過疎化や、最悪の場合は消滅に至るというシナリオは、日本全国さまざまな組織や産業で起こっている。社会の劇的な変化に対応できなければ、衰退の一途をたどるのは世の習いだ。100年の時を経て日本のナンバーワンスポーツになった野球は、足元の危機をどうやって乗り越えていけばいいのだろうか。
まずは深刻な少年野球の人口減少の事実を受け止め、それに基づいた未来予想図を描き、野球離れを進行させる諸々の要因を浮き彫りにすることがファーストステップだ。少子高齢化の進む日本で、野球界が見舞われている危機に目を向けることは、野球界の当事者はもちろん、日本全体にとって意義あるケーススタディーになるはずだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら