あのコトラーも賞賛!「キットカット」のマーケティング /個食化に対応するキーワードは「ピッタリ感」 /鉄ちゃんグッズに市民権を!巧みなコラボ 《それゆけ!カナモリさん》

 

■2月10日 鉄ちゃんグッズに市民権を!巧みなコラボ

 「これを考えたヤツは間違いなく天才だ……」。その画像を見た時確信した。

さりげないようだが、よく考えればムリムリなこんなカタチ、普通では思いつかない。MSN産経ニュースに掲載された記事「“ダサカワ”? RODYと赤い電車、異色のコラボ」を見て欲しい。鉄道マニアグッズと、女子高生向けのカワイイの融合。一体何を狙っているのだろうか。

RODY(ロディ)と赤い電車のどちらから説明したものかと迷うが、ロディからいこう。日本で発売されたのは2000年からということは、キャラクターとしては比較的新顔ということになるのだろうか。もう10年近く経てば日本になじんだともいえるのかもしれない。

元々はイタリア生まれの子供用の乗用玩具だ。ちょっと何の生き物がモチーフなのか、そのトボケた顔を見ると少し悩むが、馬だ。日本では玩具としてよりは、そのカラフルさが受けてオシャレなカフェなどにインテリアとして置かれるなどして人気が上昇。キャラクターグッズとして文具や雑貨、ベビー用品、ファッショングッズまでおびただしい数の商品が発売されている。

このロディ、一昨年あたりから他のキャラクターとのコラボレーションが行われるようになった。ハローキティやキューピー人形などだ。それぞれのキャラクターが着ぐるみとしてロディをかぶっている姿なのだが、今回のコラボのすごいところは、ロディと電車を単純にドッキングさせているところだろう。(まぁ、電車に着ぐるみはムリなのだが……)。さらに、本来乗って遊ぶロディが電車に乗っている。ここ、筆者のツボである。

さて、そのロディに乗っかられている赤い電車を見てみよう。

赤い電車、京急線だ。車体の正面に「2100」の文字が見える。そう、これは京浜急行電鉄の名車、「京急2100形電車」なのだ。実は筆者の好きな電車の一つでもあるからたまらない。会社員時代、東銀座のオフィスに勤務していて、横浜方面のクライアントの所に行く時は好んでこの電車に乗ったものだった。快特なのだが、有料の特急電車のような座り心地のいいシートはベンチシートではなく、進行方向を向く2人掛け。各車両の端にはボックスシートもある。それに乗っていると、ちょっと旅行に行く気分でなんとも楽しい。

この電車、現在は10本を残してもう製造されていないのだが、ファンが多い。前述の豪華なシートの内装だけでなく、他の車両でも聞こえるが、京急独特の駅から発車する時に聞こえるモーター音が印象的で、その音も人気の秘密だろう。音の正体は電車のモーター。ドイツのシーメンス社製。インバーター装置が搭載されており、それが音の発生源だとマニアの部下から横浜に向かう時、教えられたのを覚えている。

記事には女性から長らく格好悪いものの代表と見られてきた鉄道グッズだが、京急電鉄は「女子高生や若いお母さんたちを取り込みたい」とイメージ一新を狙っている、とある。ではなぜあえて多くのファンを持つ2100形を用いたのか。「女子高生や若いお母さんたち」だけを狙ったものではないだろう。しっかりマニアも狙っているように思う。

女性達はかわいいロディが奇妙な感じで電車に乗った携帯ストラップやファスナーストラップを「ダサカワ」と感じて身につけたとしよう。すると、今まで本当のマニアしか身につけていなかった「電車グッズ」は一気に市民権を得ることになる。「本当は電車の携帯ストラップ付けたいんだけど、人から“鉄ちゃん(鉄道マニア)”って呼ばれるから……」と購入を留まっていた潜在層を一気に刈り取れる。

最初は女性にも人気の「ロディ×2100形コラボ」を買うだろう。女性に「ダサカワいい!」と評価される。購入への抵抗感が一気に弱まる。

マーケティング活動で顧客ターゲットを選定する時に、忘れてはいけないポイントがある。「優先順位」と「波及効果」だ。どのターゲットを取り込めば、別の属性を持ったターゲットも一緒にくっついてくるのか。それが分かれば、おのずと優先順位が高いターゲットがわかる。

有名人やタレントをユーザーとして紹介し、一般人を取り込む手法もその一種だ。B to BのIT関連のマーケティングなら、先行事例として紹介すべく、採算は二の次で、有名企業を「リファレンス・ユーザー」として取り込むのが常套手段である。

ちょっとムリヤリな感じも漂うこのおかしなコラボ、意外としたたかな戦略が込められているのかもしれない。早速、筆者は釣られて、品川駅あたりで買い求めてみようと思う。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年2月13日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

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