「太郎と進次郎」、首相候補2人のライバル意識 3代かけての悲願達成か、2組目の親子首相か

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初当選以来、菅氏とは一定の距離を保ってきたとされる小泉氏だが、参院選直後の7月下旬に月刊誌の企画で菅氏と初めて対談。菅氏は小泉氏を「ポスト安倍の有資格者」と持ち上げた。

8月7日にはあえて菅氏を官邸に訪ねて結婚を最初に報告したことで、「菅氏と小泉氏の距離が一気に縮まった」(自民幹部)とみられている。このため、「菅氏は令和おじさんとしての人気急上昇でポスト安倍の有力候補となったが、本音は河野、小泉両氏の後見人として自民党のキングメーカーを狙っているのでは」とのうがった見方も出ている。

もちろん現状では、首相が4選を狙うか、任期途中で退陣しない限り、2021年9月に実施される予定の総裁選の有力候補は石破氏と岸田文雄政調会長だ。河野氏は「第3の候補」としての出馬に意欲をにじませるが、小泉氏は「次の次狙い」(周辺)との見方が多い。仮に河野氏が出馬しても、年長で当選回数も多く派閥の領袖でもある石破、岸田両氏を破って河野氏が首相の座を射止める可能性は低いとみられている。

となれば「次の次」となる2024年総裁選で、河野、小泉両氏が激突する可能性は少なくない。その時には河野氏は61歳、小泉氏は43歳で、小泉氏が勝てば自民党史上最年少の総理総裁誕生となる。その場合、勝敗のカギを握るのは安倍、菅両氏となる可能性が高い。

王道を歩む小泉氏、横道から頂点目指す河野氏

小泉氏については、現在、派閥を超えた自民若手中心の「小泉親衛隊」が形成されている。祖父と父が首相だった福田達夫氏(衆院当選3回)がその中軸となるなど、政権獲得への基盤づくりも進んでいる。 

対する河野氏は、麻生派を引き継ぐ可能性も不透明だ。それだけに河野、小泉両氏が対決する総裁選では、「派閥単位での多数派工作に頼らない新時代の総裁争い」(自民長老)となる可能性もある。その場合、党員・党友による地方票が勝敗のカギとなるが、現状では圧倒的な人気を持つ小泉氏が有利だろう。

ただ、政治家の人気は移ろいやすい。今回の結婚発表も「あまりにもあざとい」との自民党内の批判ややっかみも少なくない。一方で、河野氏も「もともと一匹狼だけに党内に友人が少ない」(自民若手)という弱点も目立つ。

戦後の政界で祖父と孫が首相となったのは、「吉田茂―麻生太郎」「鳩山一郎―鳩山由紀夫」「岸信介―安倍晋三」の3組で、親子で首相というのは「福田赳夫―福田康夫」だけだ。将来、小泉氏が首相の座を射止めれば2組目の親子首相となる。一方、河野氏が首相となれば「親子孫3代かけての悲願達成」となるわけだ。

これまでの河野、小泉両氏の総理総裁候補への歩みを比較すれば、「小泉氏は王道、河野氏はやや横道から頂点を目指している」(自民長老)ようにもみえる。保守合同後、神奈川県選出の首相は小泉純一郎氏だけで、「まさに政治家一家の跡取り同士の因縁の対決」(自民幹部)となる。どちらが勝つのか、はたまた2人とも首相の座にたどり着くのか。それは「今後の両氏の行動次第」(首相経験者)となる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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