カゴメ、農業で売り上げ100億円に王手 トマトバブルはじけても生鮮トマトは黒字拡大

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味も食感も栽培法も、加工用トマトとは違う

カゴメは従来から加工用トマトについては、契約先の農家で栽培してもらったものを買い取り、トマトジュースなどの原料に使ってきた。この加工用トマトに比べ、サラダなどでの生食用途が主流となる生鮮トマトはどこが違うのか。

加工用トマトの生産では、収穫時にかごにたくさん詰めるなど生産効率が重視されるため、皮が固く、果肉もゼリー状の部分が少ないといった品種が中心となる。露地栽培で夏に収穫し、すぐにトマトジュースなどの加工に使う分を除けば、濃縮して冷凍保存するかたちになる。

一方、生鮮トマトは生食での味や食感が重視され、皮や果肉も加工用より軟らかい品種が求められる。保存が利かないので、1年を通して安定生産できなければ、事業として成り立ちにくい。店頭に並んだときの見た目ももちろん重要だ。

そこで、カゴメが生鮮トマト事業スタート時に導入したのが「施設栽培」だ。当時、日本国内では水も肥料もコンピュータ管理するような施設内でのトマト栽培は、大規模に行われておらず、「世界でいちばん施設栽培技術が進んでいたオランダの事例を導入した」(カゴメ)。

もちろん、コンピュータ管理の施設栽培とはいえ、日々のトマトの育ち具合を人間の目で見ながら肥料や水を調整するといった、ヒューマンな要素は欠かせない。カゴメでは品質のバラツキを避けるために、契約先の菜園に定期的に人を派遣し栽培指導を行っている。

「海外」「トマト以外」にも参入

足元でカゴメが力を入れているのは、「海外」と「トマト以外」への進出だ。

海外については昨年9月、中国に可果美紅梅(寧夏)農業有限公司を合弁設立し、海外で初となる生鮮トマト事業を開始した。カゴメの保有するトマト品種を軸に現地栽培。小売店頭で販売している日本とは異なり、富裕層など会員向け宅配業者ルートでの販売が中心となりそうだ。

トマト以外については、昨年12月、葉物野菜「ベビーリーフ」の大規模有機栽培を手掛ける農業ベンチャーの果実堂(熊本)に10%強出資すると発表。カゴメは果実堂に技術支援を行う一方、生産された野菜の供給を受け、トマト以外では初となるカゴメブランドで販売する。

参入から15年たち、年商100億円という大台に王手をかけたカゴメの生鮮野菜事業。農業分野で一段の成長を狙うには、こうした海外やトマト以外への展開がカギを握りそうだ。

『週刊東洋経済』2月8日号「強い農業」では、カゴメをはじめ、モスフードサービス、イオン、ローソン、ロイヤルホストなど企業による農業参入についてリポートしました) 

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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