「合意なき離脱」はヨーロッパ全体を傷つける ブレグジットに伴う不確実性に金融界が警告

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――ブレグジット後もイギリスは金融面での競争力を維持することができるでしょうか。

私は楽観的だ。イギリスの金融界は国際的関係を強化している。日米などの先進国だけではなく、新興国との関係も深めている。世界で保護主義の台頭が懸念される中、イギリスはWTO(世界貿易機関)の再活性化を図り、財の貿易に比べて遅れたサービス貿易のグローバルなルールの整備に力を注いでいる。

シティーUKの本部が入るロンドン市内の建物(記者撮影)

ロンドンとイギリスは金融サービスにおける国際的システムのハート(心臓部)といえ、そのことが日本を含め、世界の金融機関がイギリスに拠点を維持したいと考える理由といえる。

イギリスはブレグジット後、規制や税制、移民政策など競争力維持のための政策であらゆる選択肢を持つ。そして、国際金融センターとして、コーポレート・ガバナンスなど市場の高いスタンダード(基準)とクオリティー(質)を維持していく。

アメリカや中国との関係も強化していく

――アジアインフラ投資銀行(AIIB)に真っ先に参画するなどイギリスは近年、金融面で中国との関係も強化しています。そうした中で米中貿易戦争も激化しています。

現実的にわれわれはアメリカと良好な関係を維持したいし、巨大で成長力のある中国との関係も強化したい。中国は「一帯一路」構想にみるように野心的であり、イギリスは中国の野心を支援する特別な専門性を持つ。

人民元の国際化においても、取引する最適な場所は最大市場のロンドンだ。中国が積極化しているグリーンファイナンスにおいても膨大なビジネス機会がある。金融サービス面だけではなく、法務やプロジェクトのアドバイザリー業務の面でも専門性を提供できる。

もちろん、貿易戦争は難しい問題だ。日本と同様、イギリスは保護主義から利益は得られない。われわれには国際的な国家としてのDNAがある。

――日本企業の動向についてはどう見ていますか。

イギリス経済に対する日本企業の関与は非常に重要であり、日本からの投資をこれからも歓迎している。シティーUKのメンバーにも日本の金融機関が入っており、最も国際的な市場で国際的なビジネスを行っている。

イギリスに進出した日系自動車産業の決断(撤退や生産縮小など)について言えば、それはブレグジットによるものではなく、(電気自動車など)最新技術の変化やグローバル市場の変化が背景にあると認識している。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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