公立幼稚園・保育園の廃止が急ピッチ、廃止を強行した東久留米市は是か《特集・自治体荒廃》
保育園民営化でも対立 保育環境激変を不安視
ところが、保護者の理解が得られないうちに、民営化先の事業者選定を早々と実施するなど、市は大急ぎで事を進めている。
市内北部の公団(UR)住宅内にある上の原保育園では、老朽化した園舎の建て替えを目的にした移転・新築計画が08年2月に具体化。市はそれに合わせて、当初、10年4月に民営化する方針を打ち出した。
ところが、保育士が一度に全員入れ替わるなどの「保育環境の激変」を理由に父母の反対が強まったことから突如、方針を転換。希望する在園児については、現在の園舎で卒園まで保育するとして、保育園の閉園時期を13年3月末に延期した。
が、「方針転換の内容は求めてきたこととまったく違う」と保護者が反発。市はそれを振り切り、昨年12月議会で、現在の上の原保育園を13年3月末で廃止する条例を可決した。
「私たちが求めてきたのは、新しい園に移る場合であれ、今までの保育士が引き継ぐ期間を十分に設けてほしいということ。それがかなうならば、年々少なくなる一方の子どもたちのために、今の保育園を3年間も並行して運営しなくて済む。民営化は財政上の理由からと言いつつ、大きな無駄を引き起こそうとしている」(3歳の子どもを上の原保育園に預けている西郡良さん=39)。
西郡さんが不信感を抱くのも、「子育てや教育に関する市の計画に一貫性がない」と感じているためだ。
「市は上の原保育園の民営化計画が発表された当初、別の保育園の例を持ち出して、民営化は大幅なコスト削減につながると数字を挙げて説明しました。ところがいつの間にか、その話に言及しなくなった。また、待機児童解消を目的に110人規模の保育園を新設するというが、この地域はもともと待機児が少ないうえ、公務員住宅の廃止などで子どもの数の減少も明らか。なぜこの地域でいち早く大きな保育園に建て直す必要があるのでしょうか」(西郡さん)。
1月31日、上の原保育園では市の職員が保護者を相手に「民営化説明会」を開催した。そこでは次のようなやり取りがあった。
「市の保育士を新設園に派遣するのははっきり申し上げて難しい。できないということです」(市の幹部)。
「なぜ今までの保育士の先生が新しい園に派遣という形で行くことができないのでしょうか。一定期間の合同保育やきちんとした引き継ぎができるなら、そのほうがいいんです。ほかの自治体ではやっている所もあるでしょう」(保護者)。
結局、一致点も見いだせないまま、「時間が来ましたので」と市の職員が話を締めくくった。
幼稚園の廃止も、保育園民営化も条例を通せば、実行に移すのは容易だ。しかし、こうした手法が繰り返されるうちに、住民の自治体運営への信頼は低下していく。その代償の大きさを認識する必要がある。