公立幼稚園・保育園の廃止が急ピッチ、廃止を強行した東久留米市は是か《特集・自治体荒廃》
「二男は閉園の意味をよくわかっていないようですが、小学生の子どもは『市長に文句を言いたい』と口走ることがあります」(渡辺さん)。
「公立と私立で質の差があってはいけない。どちらが優れているとも思わない」と野崎市長は語る。一方、公立を選んだ親は「小学校や地域との連携や交流がしっかりしていることに信頼を感じて入園を選択した」と口々に語る。
「存続を求める陳情をしたときは、保育料が上がってもいいから残してほしいとお願いしました。すると『廃止は財政的な理由ではない』と市から答えが返ってきた。でも違うときには『財政上の理由』が持ち出された。結論ありきで、理由は後でつけたのではないでしょうか」(大道幼稚園を卒園した児童の母親の寺田美奈さん=41)。
卒園の1カ月以上も前に、早々と閉園式を執り行う一方で、3人の園長を含む9人の幼稚園教諭の配置転換先は決まっていない。「畑違いの一般職に配転となる可能性が高く、これまでの幼児教育の成果も散逸する可能性が高い」と白石玲子・東久留米市議は指摘する。
市所有の幼稚園の跡地の利用計画も決まっていない。野崎市長は「3月議会で一定の方向性を示したい」と語るが、かつて閉校した小学校の校庭が不動産会社に売却されたこともあり、保護者や住民からは「利用計画も立てずに廃園にするのは無責任だ」との批判も上がっている。
また、市は公立幼稚園の閉園を決めた際、閉園で浮いた資金を、0歳児から5歳児までの幼児教育充実に振り向ける考えを示してきたが、何も具体化していない。それどころか、私立幼稚園の所管部署は、すでに教育委員会から子ども家庭部に移管されている。そして公立幼稚園もなくなることで、教育委員会は幼児教育推進の手だてを失った。
東久留米市は、公立保育園の民営化をめぐっても、父母の強い反発を招いている。同市は市内8カ所の公立保育園をすべて民営化させる方針を打ち出している。
市は03年8月の「財政危機宣言」を踏まえた「04年度経営方針」で全園民営化の方針を表明。06年8月のひばり保育園の建て替えに伴う公設民営化を皮切りに、老朽化した園舎の建て替えに合わせて民営化を押し進めようとしている。