「機動戦士ガンダム」の人気が40年も続く理由 ヒットの仕掛け人が明かす「ガンダムの未来」

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――ヒーローとして活躍する登場人物の装備に、「ソフトバンク」や「DMM.com」など実際の企業や商品のロゴがつくというのは斬新な発想でした。

発想のもとになったのはF1なの。F1に出場する車って、スポンサーロゴが沢山ついているでしょ。未来は警察が民間に委ねられていて、スポンサー企業がいないと犯人を逮捕できなくなっているんじゃないか。そんなことを話し合って生まれたアイデアだった。

――IPの創出において、バンダイナムコグループの強みとは?

グループの特徴を一言でいうと、IPの表現方法の違う会社の集合体。IPを一次的に世の中に出そうとしたとき、サンライズはアニメ、バンダイなら玩具、バンダイナムコエンターテインメントならゲームという手段で表現するけど、1つ新しいIPが出てきたら、ほかのグループからも、食玩からアパレルまでさまざまなカテゴリーの商品がバッと出てくる。

これを1グループでできる会社はなかなかない。「コンテンツビジネス戦略会議」という、グループ内で新しいIPを作ったらそれを披露する場があって、面白ければほかのグループが参加できる。

重要なのは「妄想力」

――“当たるIP”に共通点はありますか。

作品を作るクリエイターの熱量かな。才能の有無なんて、一見してわからないんだからさ。だから、社内のプロデューサーに求められているのは、いかに熱量のあるライターや監督などを外から見つけてきて、自分のチームとして周囲に配置できるか。個性の強い彼らと向き合って、彼らがやりたいことだけではなく、「この方向でやっていこうよ」と導くのが役目。雑誌の編集者だって同じだよね。

――まったく同じです。宮河さんのように、ディレクターから上がってきたアイデアにGOサインを出す立場に必要なこととは。

エンタメにおいて、絶対に当たるというものはないと思っている。だから、決める人は極力少ないほうがいい。自分の経験として、合議制でみんなが賛成して世に出したものの中から、大きく成功したものはない。

みやかわ・やすお/バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長 。1956年生まれ。1981年バンダイ入社。2000年4月、グループ傘下でガンダムシリーズの映像作品を手がけるサンライズに移籍。ネットワーク開発部長を経て、2014年4月に同社社長。2018年にバンダイナムコホールディングス執行役員、2019年4月から現職(撮影:梅谷秀司)

決めるために重要なのは、「妄想力」があるかどうか。小さな男の子が、飛行機をもって「ブーン」といいながら遊ぶじゃない。彼らの頭の中では、飛行機は本当に空を飛んでいる。あれを大人になっても思い浮かべられるか、つまりクリエイターの面白いアイデアを、映像、ゲーム、おもちゃとして、どうすれば実現させられるか、妄想することが重要だ。

ゼロからイチを生み出すというと難しくとらえられがちだが、誰でもしている妄想を物語にすればいいだけのこと。僕の場合も、才能というより「いつまでもガキだ」と怒られるほどいつも突飛な妄想ばかりしているから、ずっとこの仕事をやっているのかもしれない。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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