「貧困」を考えるうえで背けられない客観的事実 数字だけでなく貧困に生きる人の声も必要だ

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具体的には、「身体的暴力(殴る・蹴る・叩く・物を投げるなど)」「精神的暴力(暴言・脅迫・いやがらせなど)」「性的暴力(性的ないやがらせ・性的な行為の強要など)」「経済的暴力(必要なお金を渡さない・お金をせびるなど)」「社会的暴力(ほかの人と会うことを嫌がる・出かけることを嫌がるなど)」などが挙げられます。

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これらを個々人の問題ではなく、解決すべき社会問題として捉える流れから、2001年に「DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」が成立しました。2012年の内閣府の調査結果では、既婚女性の3人に1人がDV被害経験を持ち、23人に1人が生命の危険を感じるほどの暴力を受けたことがあると報告されています。

現実にDVを受けていても、被害者側が経済的に自立していないために、逃げ出したくても逃げ出せないというケースがよくあります。また、DVが原因で仕事を続けられなくなったり、引っ越しせざるをえなくなったりと、被害者側が経済的な基盤や人間関係を失ってしまうこともあります。社会の問題として、まだまだサポートが足りていない状況です。

暴力の問題は女性に限らず、子どもや障害者、高齢者などの弱い立場にある人に及ぶことも多く、いわゆる「児童虐待の防止等に関する法律」「障害者虐待防止法」「高齢者虐待防止法」など、さまざまな施策が整えられつつあります。

しかし、このような流れがあること自体、それだけこういった人たちが社会の中で暴力を受けやすく、経済的な自立が難しいという証左でもあるのです。

女性や子どもを取り巻く状況は待ったなし

また、ひとり親家庭の貧困率は54.6%(2012年)と高く、「母子世帯」では95.9%が平均所得金額以下で生活しています(2013年「国民生活基礎調査」)。子どもの貧困率については2015年に13.9%と、2012年の16.3%から減少したものの、それまでは上昇傾向にありました。女性や子どもを取り巻く状況は待ったなしなのです。

なお、「女性」や「子ども」というように、特定のテーマをもって問題を語ることは、物事をわかりやすくする一方で、その背景にある複合的な要因を見えづらくする方向にも働きます。

その是非については本稿では踏み込みませんが、私たちには、この記事で確認したような「数字」だけでなく、実際に「貧困」という状態を生きる人々の生に対する想像力も必要なのです。そのうえで、これからの話をする必要があるでしょう。

大西 連 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長

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おおにし れん / Ren Ohnishi

1987年東京都生まれ。新宿ごはんプラス共同代表。生活困窮者への相談支援活動に携わりながら、日本国内の貧困問題、生活保護や社会保障制度について、現場からの声を発信、政策提言している。著書に『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)。Twitter:@ohnishiren

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