「事故物件住みます芸人」はこうして誕生した 8万部ヒット著書も持つ松原タニシの軌跡

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そして、自身が事故物件に住んだ経験を描いた『事故物件怪談 恐い間取り』が発売されると大きな話題になり、8万部を超えるヒット作になった。

続いて自身が心霊スポットを巡った経験をまとめた『異界探訪記 恐い旅』もヒットしている。

左から『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)、『ボクんち事故物件』(竹書房)、『ゼロから始める事故物件生活』(小学館)、『事故物件芸人のお部屋いって視るんです!』(ぶんか社)

また『ボクんち事故物件』(竹書房)、『ゼロから始める事故物件生活』(小学館)、『事故物件芸人のお部屋いって視るんです!』(ぶんか社)と、松原さんを主人公にした漫画も連載され書籍化されている。

事故物件をテーマにしたテレビ番組の出演も増え、一気に知名度が上がった。

はたから見ていると、独自のルートでお笑い芸人としてのし上がってきているように見える。

自分だけのお笑いをやる意味を探求し続けていきたい

「本に関しては売れるとはまったく思ってなかったのでビックリしました。新たな事故物件に引っ越すときに、金銭的な苦労をしなくて済むのはありがたいですね。ただ、正直やってることや、心持ちは全然変わっていないですね。多くのお笑い芸人と同じ方向の面白いことを目指さなかったのが結果的によかったのかもしれません。賞レースや人気番組の出演だけを狙っていっていたら、今頃もう芸人を廃業していたかもしれませんね。

これからも自分にとっての面白いこと、自分だけのお笑いをやる意味を探求し続けていきたいと思っています」

松原さんは、一般的なお笑いの道を歩めなかった芸人だといえるだろう。賞レースでいい成績を出し、バラエティ番組に出て、お茶の間の知名度を上げていくような、売れっ子芸人のテンプレートなルートをたどれなかった。

それで、彼は誰もやっていない、自分だけのルートを開拓した。そのルートの多くはお金にならないものだったが、結果的には本がヒットするという自身でも想像していなかった多額の収入を得ることができた。

松原さんの話を最後まで聞いて、ふと彼が高校時代に柔道部で一人飛びつき腕ひしぎ十字固めを練習していたエピソードを思い出した。たった一人他人とは違うことを黙々とやり続ける。周りに理解されようがされなかろうが、やり続ける。松原さんのマインドはその頃から変わっていないのだろう。

これからも、他人とは違う松原さんだけの道を歩んでいってもらいたいと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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