国鉄技師長・島秀雄氏が語る「昭和の鉄道車両」

月刊「鉄道ファン」創刊号掲載の貴重な対談

Y「国鉄、私鉄を問わず島さんのお好きな車は何でしょう」

S「さあ、それは難かしいことを聞きますね」

Y「やはり立場上お答えになれないのかもしれませんね」

S「私鉄は私鉄なりに、それぞれ目的に合った車両が作られていると思うんですよ。でもね、僕は日本で志をとげようと思えば国鉄を除いてはないと思っています。

国力に重大な関係ありというのは、国鉄の方ですね。私鉄の場合は、多くの場合、他の交通機関でも間に合うことが多いと思うのです。そこで、国の動脈である国鉄の幹線を電化しようと思うし、亜幹線はディーゼル化するわけで、そうなると必要な車の恰好が、自からきまってくるのです」

Y「最近でた東海形の次の恰好の車両は、運転台の位置が少し高くなって正面の窓が小さくなりましたね。あれはどう思われますか」

S「そういうこまかいことは、僕は知らないです。僕は、目的に合うようにものを作ればいいものが出来るのだと思いますね。おかしな飾りをつけてみたって仕様がありませんよ。だから国電にしても、おかしなものをつけていないはずです。

電車の正面に貫通ドアーをつけなければならないというのは、その時代の要請ですからね。そういう時に体裁上のことで貫通ドアーをつけないと頑張るのはつまらないことですよ」

Y「同じ目的で、貫通ドアーをつけても各鉄道毎に色々の面構えになりますが」

S「それはそうです。しかし我々国鉄としては、数奇をねらっての広告的価値のあるものは、目的とは思っていません」

「こだま」と「はつかり」ならどちら?

Y「すると、現在の段階で島さんが一番恰好のいい車と思っていらっしゃるのは」

S「国鉄の電車です」

Y「国電の中ではどの形式が?」

S「またくり返しその質問ですか。それは一つずつ使用目的がちがうから何とも……”こだま”や”はつかり”のように前の方に物をどうしてもおかなければならないとなれば、あんな風に鼻が出っぱってしまうのは止むを得ないことでしょう。鼻が出っぱった恰好において、どんな形がいいかとなると、今皆さんがごらんの通りのものになるんです」

Y「それでは同じブルーリボン賞の車ですが、“こだま”と“はつかり”ではどちらに?」

S「そうね。はつかりの方はタブレット受渡しその他の関係で運転台の位置が”こだま”より低いなど色々の制約があって無理をしているところがあるから、“はつかり”の方が損をしていますね」

Y「どうもありがとうございました。技師長も満60才の還暦を迎えられておめでとうございます。どうぞ今後とも御健康で次々とすばらしい車を沢山登場させていただいて鉄道ファンを喜ばせて下さい」

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