国鉄技師長・島秀雄氏が語る「昭和の鉄道車両」 月刊「鉄道ファン」創刊号掲載の貴重な対談

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Y「ところで、ブルーリボン賞を受賞した“はつかり”ですが、思わぬ火事を起すので我々ファンはハラハラしているのですが、あの故障は島さんは予期されなかったんでしょうね」

S「勿論、予期しませんでしたよ。故障の原因は、結果としてはつまらぬことでして、案外配管なんかに不注意であったことを知って残念だと思います」

広軌新幹線用試作鋼体(写真:鉄道ファン図書館)

Y「今、建設中の東海道新幹線は、理想的な高速電車で東京~大阪を3時間で結ぶということになるわけですが、現在線の車両は例えばこだまなどの優秀な列車は今後どんな風になるのですか」

S「新幹線が出来たら、今の東海道線の輸送がとても楽になるだろうという考えがあるがこれはおかしいと思いますね。特急や急行が新線に移れば、残った列車の足並は揃うわけだから、もっと増発出来る筈で、そうなれば車が足りなくなり、現在線の余った車を山陽線にもってゆくという考えはおかしい。

例えば、今の“こだま”の車両でも車が足りなくなれば、格下げしてでも使うべきでしょうね」

車両はできるだけ働かせるべき

Y「今後、造られる狭軌用の電車についても何か色々と期待したいんですが」

S「通勤用の車だって何もサイドシートがよいとも思いませんね。クロスシートにしたってよいと思っていますよ」

Y「それは結構な話です。扉の数を片側で4ツにということは乗降時間を短縮するために必要なことですが、これからの車が高加速、高減速なのはわかり切ったことなのですから、クロスシートの方がつかまる所が多くて乗客に親切なわけです。立っている人にも、座っている人にも」

S「乗客は入口からそんなに奥へ入って行こうとしないものですよ。だから入口が多ければそのへんにかたまっているので、クロスシートでも差支えないんじゃないかとも思いますね」

Y「全然、同感です。クロスシートになったらラッシュ時でないときはいいですね。しかし、今のラッシュには全くやり切れません」

S「昼間も、もっと車を使ったらと思います。今や、道路交通が正常でなくなって都市域内の電車鉄道はとても期待されているんですから」

Y「でも、この頃は電車や客車の使い方はずい分激しくなりましたね。運賃が安いからこんなところで儲けなくてはというわけですか」

S「車両のような機械は、できるだけ働かせるべきです。それが人間の知恵というものです」

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