「並程度の景気後退」が深刻不況につながる現状 世界の中銀にはもはや政策余地がない
金融政策に関して言えば「並の景気後退が相手であっても、対応できるだけの政策余地がないのは確かだ」とブランチャードは述べた。
マリオ・ドラギECB総裁の後継に決まったクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事は、財政出動が難しい中で中央銀行が経済防衛の要になる可能性が高いと指摘している。「国債の大量買い入れと低金利により、多くの国では政策余地が狭まっている」とラガルドは6月、ブログに書いた。また、景気減速となれば各国は経済政策で足並みをそろえ、「断固たる金融緩和と可能な限りの景気刺激」を行う必要があるだろうとも述べた。
日本が世界に示した「残念さ」
深刻な景気後退の後、世界経済の成長率は徐々に回復し、2018年の初めまで景気の拡大は続いた。だが最近、貿易の流れは滞り、アジアから欧州まで製造業関連の指標も低迷するなど陰りが見えている。
日本を見れば、行動への意欲がいい結果を生むとは限らないことがよくわかる。日銀の黒田東彦総裁は経済活性化を目指してあらゆる手を使った。マイナス金利政策しかり、国債や株式の買い入れしかりだ。政府も内需拡大のための財政出動でそれを支えた。こうした努力にもかかわらず、インフレ率はターゲットに達しない状況が続いている。経済成長が鈍化すればデフレのリスクが高まるため、これは悪いニュースだ。
朝日新聞編集委員で『日本銀行「失敗の本質」』の著者である原真人によれば、深刻な景気減速が起きた場合に黒田にどのくらい行動の余地が残されているかははっきりしない。タブーであるはずの政策が普通になり、続けているうちに何も感じなくなってしまったと原は言う。
中央銀行のトップたちは、財政当局の助けなしには自分たちの「武器」も十分な効果をもたらしえないと以前にも増して強く警告するようになっている。「財政能力がどうあれ、金融政策は任務を果たし続けるだろう」とドラギは言う。だが政府からの援助のほうが「同じ仕事をより迅速に行えるし、副作用も少ないはずだ」。
(執筆:Jeanna Smialek記者、Jack Ewing記者、Ben Dooley記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2019 New York Times News Service
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