知らないと大損する保険契約「3つの基本」 老後不安をあおる勧誘の罠から逃れるには?

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① 保険でお金を殖やすのは難しい

今の利率では保険でお金を確実に殖やすのは無理です。保険会社だけが魔法のように上手な運用をできるなんてことはありえません。それでも「高金利の外貨建て保険は別だ、お金は殖える」と思っている人は私の過去の記事「『保険でお金を貯める』のはやめたほうがいい」をぜひお読み下さい。保険は、もしものときに経済的に困らないために入るものだと心得ましょう。「保障と貯蓄は別々に考える」ことです。

②保険は、お金の「何にでも使える」機能を奪う

貯蓄の特徴は「何にでも自由に使えること」です。しかし保険は違います。お金に色をつけ、使い道を限定してしまうことになります。
保険という箱に入れてしまうと、保険会社が決めたことに当てはまらないと保険料は支払われません。

しかも、この箱にお金を入れておくには、たくさんの手数料がかかります。銀行の普通預金に入れておけばコストはタダ、必要なときに自由に引き出せるのに、保険ではわざわざ高い手数料を支払って、お金を使いにくくするのです。

「いやいや、保険はもしものときのために入るのだから、貯蓄とは違う」と思いますか? 確かに、一般的な保険はそうです。お金を殖やすのに長い時間がかかる預貯金とは違い、1年しか保険料を支払っていなくても支払い事由に該当した場合、約束した金額が支払われます。

でも、それはあくまで、「もしものとき」に該当した場合。保障のために入る保険は、必要最小限にすべきです。保険料は抑えて、その代わりに自由に使えるお金を殖やしいてくことが正しいリスク管理です。

死亡保障は、経済的に困る遺族がいる場合に、国民年金保険、厚生年金保険で保障される内容を確認し、不足分を私的保険で補うようにしましょう。また医療保険は、保険内容を充実させたからといって病気の罹患率が下がるわけではありませんので、公的な健康保険で保障される内容を知ったうえで必要性を考えましょう。

長期契約すると、未来の「モノを買う力」が損なわれる

そして、3つ目の基本です。

③長期契約の保険は、未来の「モノを買う力」を損なう

多くの保険は、契約時に、支払われる金額が決まります。例えば、契約時に決められた保険金額が100万円なら、満期時に受け取るのは100万円です。

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15年後、ビックマック390円が700円になっていれば、お金の価値は下がります。モノを買う力が下がるのです。今の100万円と未来の100万円の価値は同じではないということです。入院給付金や介護給付金なども同じです。何十年先の高齢になってから給付される保険金額は今の価値とは違いますし、制度自体が変わっている可能性もあります。

また貯蓄性保険も同じです。契約時に積立利率(何%で運用するか)が決められます。世の中の利率が上がっても上げてはくれません。高コストの箱に入ったお金は大きくなれないのです。先ほどの村山さんが買ってしまった変額保険は、積立利率が決まっている定額部分と、運用次第で利率の変わる変額部分の組み合わせでできています。約80%に当たる定額部分の積立利率は15年間変わりません。

こう考えると、高コストの保険という箱は、お金を殖やす目的にはまったく向いていないし、もしものときの備えとして自助努力で加入する保険は「必要最小限でよい」ということになりますね。これが、最低限知っておいてほしい保険のマネーリテラシーなのです。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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