日本と米国でこうも違う「キャッシュレス」事情 実は先端的なサービスが数多く普及している

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アメリカでの治安問題は切実だ。カリフォルニアに長年住んでいた日本人女性は、「現金をできるだけ持ち歩かないが、いつも20ドルを出しやすいところに持つようにしている」。なぜかというと、「万が一悪い人に出会ったら、とりあえずこれを取ってと言えるから」だという。

昼間にシアトルでATMで現金を下ろそうとしたら、銃が後ろから突き付けられ、現金を奪われたため、徹底的にキャッシュレス生活を始めたアメリカ人の女性もいた。

cashier’s checkは電子入金もできる(筆者撮影)

そして、現金は、アメリカではなんとなく「収入が低い層が使う『よくないお金』」といったネガティブなイメージがあるようだ。

例えば、カルフォルニア州でも大麻が嗜好用として合法化されたが、連邦法では違法薬物としての扱いだ。そのため銀行を介した取引ができず、大麻の取引は現金となる。

教育レベルの高い住民たちは、これから現金取引が増え、強盗などの犯罪も増えるのではないかと心配している。

ちなみに中国では、現金しか使えない人は「ダサい」「時代遅れ」「リテラシーがない」というイメージがある。

日本の場合、上述の不安などはほとんどない。現金支払いのほうが逆にストレスがないといえるだろう。不動産売買で週末に契約する場合、銀行が休みで当日着金ができないときは手付金と仲介手数料を現金で授受することが多いようだ。

冒頭のcashier’s checkというのは、銀行が保証する小切手なので不動産業者も安心だが、日本では大金を持ち歩くことに不安が少ないという、すばらしい国民性と社会環境から「キャッシュレスにしよう」という意識がそもそも芽生えにくいのだろう。

ストレスゼロのキャッシュレス

安心感のほか、日本におけるキャッシュレス浸透上のボトルネックは、「ユーザビリティー」と「ストレス」だと思う。〇〇Pay(ペイ)など各社のキャンペーンで盛り上がっているが、特定の1社のスマホ決済方法でどこでも使えるサービスは今の日本にはないので、正直ストレスが大きい。

供給者サイドの都合でサービス開発される部分が大きく、消費者・利用者サイドの「ユーザビリティー」への配慮が不足しているように感じられる。そして、いまでも「現金支払いのみ」の小売店が日本国内に点在している。

次ページ 中国やアメリカではどうか?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事