トランプ政権が制裁、「米・イラン」は一触即発か

日本をはじめ世界は戦争を回避できるのか?

イランが核合意に戻る意思を見せているということは、アメリカ・イランの危機も、イランが核合意を全面的に履行すれば解決する可能性はある。では、イランが核合意に戻るのはどのような条件の下であろうか。これまでのイラン側の主張を見る限り、イランの国益が実現されるとき、すなわち米国の制裁が継続していたとしても、欧州や中ロがその制裁を乗り越える仕組みを作り、イランの経済的苦境を救う目処が立てば、イランは核合意に戻るというメッセージを発し続けている。

はたして、そのような仕組み作りは可能なのであろうか。欧州はイランとの間でドルを媒介にせず、バーター取引(物々交換)を拡大する仕組みとして貿易取引支援機関(INSTEX)を設立し、この枠組みを通じて取引する企業に対しては、信用供与をする準備を整えている。しかし、この仕組みに対して、イランはその努力を認めつつも不十分と評価している。それは、アメリカの二次制裁が実質的な効果を持っているため、多くの欧州企業がイランとの取引を手控えているからである。

アメリカの二次制裁は、イランと取引をした企業に対してアメリカ市場での営業許可を取り消すというものである。つまり、欧州企業にとって、イランと取引をするか、それともアメリカ市場を維持するかという選択を迫られている。当然アメリカ市場での活動は企業(とくに金融機関)にとって決定的に重要であるため、INSTEXがあったとしても、アメリカ市場へのアクセスを失うリスクを背負ってイランと取引するインセンティブは低い。

つまり、アメリカの二次制裁が継続する限り、イランが期待する欧州企業との取引(とりわけ原油の輸出)は期待できず、INSTEXを通じて取引されるのは二次制裁の対象とならない食料や医薬品といったものに限られるだろう。

中国・ロシアはイラン経済を救えるのか?

欧州がイラン経済を救えないのであれば、中ロはどうだろうか。ロシアは伝統的にイランとの経済的な関係があり、またクリミア半島の併合に対するアメリカの制裁を受けていることもあり、制裁から逃れる共通利益もある。しかし、ロシアはイランの主要な輸出品目である石油や天然ガスを生産する国家であり、イランからこれらを輸入する積極的なインセンティブはない。またロシア企業の多くもアメリカとの関係をリスクにさらしたうえでイランと取引をすることは望んでいない。

中国は若干状況が異なっている。現在米中間では「貿易戦争」と呼ばれる対立が進んでおり、中国はアメリカの制裁に対して批判的な立場を取っている。今年5月まで制裁の適用除外を受けていた8カ国のうち、日本を含む7カ国はイランからの原油輸入を停止しているが、中国だけは細々ながら原油を輸入している。これに対し、アメリカはやや特殊な解釈で制裁の適用を控えている。

その解釈とは、アメリカのイラン制裁法(2012年の国防授権法)では中国がイランにおける油田開発を行ったことに対する代金の支払いとして原油を物納していると解釈し、サービスと原油のバーターとして認めている。イランの報道では、日本企業も、イランの発電所の修復を行う対価として原油を輸入することを計画しているとも言われている。

しかし、これらのバーター取引ではイランが求める外貨を獲得することにはつながらず、イラン経済を救済することは難しい。結論として、アメリカの二次制裁が継続する限り、イランは核合意に戻ることはないだろう。

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