英ジョンソン首相誕生後のシナリオを徹底検証

新首相の戦術と、回避すべき最も怖い道

フィリップ・ハモンド財務相もジョンソン氏が首相就任なら辞めると表明。2010年のキャメロン内閣発足以来、運輸相、国防相、外務相と重責を担ってきた閣僚だ(写真:REUTERS/Henry Nicholls)

与党・保守党と閣外協力する北アイルランドの地域政党の投票総数は320と、野党の投票総数318をわずか2議席しか上回っていない。さらに8月1日の下院補欠選挙では野党の勝利が予想されており、与党のリードは1議席に縮小するとみられる。野党勢の提出する内閣不信任案に、ほんの一握りの与党議員が同調すれば、内閣不信任案は成立する。

すでに、ジョンソン氏の首相就任に反対し、政権発足に向けて複数の閣僚が辞任ないしは辞任を表明しており、与党内が強硬離脱で団結しているわけではない。10月末の離脱期限が近づき、合意なき離脱への不安がより現実味を増せば、離党覚悟で野党に同調する与党議員も現れそうだ。

内閣不信任案が可決すれば、14日以内に別の内閣が信任されないかぎり、議会は解散し、総選挙が行われる。問題は10月末の期限直前に内閣不信任案が可決されたとしても、そのまま離脱期限が到来し、合意なき離脱となってしまうおそれがあることだ。その場合、EUに対して協議期限の延長を要請し、総選挙を行うまでの暫定政権を発足する可能性が高い。

秋の総選挙後、4つのシナリオの確度は?

次の総選挙こそ、英国の離脱の行方を左右する決選投票と位置づけられよう。約束した期日に離脱できなかった保守党、離脱方針や反ユダヤ主義をめぐる混乱が続く労働党の2大政党がそろって支持を落とす中、離脱実現を目指すブレグジット党、国民投票の再実施を求める自由民主党が急速に支持を伸ばしている。

考えられるシナリオは4つある。

第1は、保守党が単独政権を立てられず、ブレグジット党に協力を仰ぐ政権となる。この場合、英国は今以上に強硬な離脱に突き進むことになり、EUとの衝突や合意なき離脱のリスクが高まろう。

第2は、保守党が議席を伸ばし、単独政権を発足させる。メイ首相の案よりも強硬な離脱案が議会で通る可能性が高まり、EU側も多少の譲与を余儀なくされる。最終的には両者が歩み寄り、合意あり離脱の確率が高まる。

第3は、労働党が政権を奪取する。穏健な離脱や国民投票の再実施の可能性が高まる一方で、ジェレミー・コービン党首の主張する公益企業の再国有化や富裕層への増税などが嫌気され、金融市場は大荒れとなる。

次ページ穏健シナリオの実現か、英国暴走か
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