任天堂、「勝ちパターン」が逆回転 「据え置き」「携帯」の統合モデル構築へ
高騰するソフトの開発費
「ゲームビジネスはたった1本のソフトで流れが劇的に変わる」というのが岩田社長の心情だ。Wiiが大ヒットしたのは、棒状のリモコンを振ってゲームをするという革新的なハードだけの貢献ではなく、WiiスポーツやWiiフィットというハードの魅力を引き出す全く新しいソフトが普及をけん引した。WiiU普及でも、WiiUでしか遊べない革新的なソフトの投入が欠かせない。
だが、任天堂は構造的な赤字体質に陥っている。今期の研究開発費は700億円と過去最高の水準。ゲーム機が大容量化して高機能化したことで、一般的にソフトの開発費は1本あたり20―30億円とされ、高騰する開発費が経営の重荷になっている。
エース経済研究所の安田秀樹アナリストは「任天堂がソフトを出せないのは開発費の高騰にも要因がある。20―30億円を回収するにはソフトをたくさん売らなければならないが、ハードが普及しなければ売れない。非常に悪循環に陥っている」と指摘する。
次世代ハードは据え置き・携帯の開発を統合
今月17日、岩田社長は大阪市内の記者会見で「任天堂がゲーム機を2―3万円で、ソフトを何千円かで買ってもらって、そういうことがずっと続くか疑問を持つべき。新たな事業構造を考えている」と述べた。30日の経営方針説明会で戦略を語る予定だが、すでに中長期を見据えた動きがある。
昨年2月、9年ぶりに開発組織を再編し、従来まで据え置き型はWii、携帯型はDS、といったようにばらばらに作っていたハードの開発を統合した。ハードの設計を統合し、ソフトを据え置き型・携帯型の相互に転用しやすくし、低コストで柔軟な開発をする狙いだ。今月、京都市南区の本社北側に建設した7階建ての新棟に夏までにスタッフ陣が集結し、統合プロジェクトが本格スタートする。
効果が出るのは、WiiUと3DSの次世代機からになるが、岩田社長は「これは(据え置き・携帯の)ハードを1種類にすることを意味しない。むしろ統合がうまくいけばプラットフォームを増やせる」と述べ、スマホやタブレット端末の拡大を背景に、新たなビジネスモデルを探る姿勢を示している。