中高一貫校の入試スタイルが激変し始めた事情 理数教育注目で創造力や思考力試す問題続々

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そうした学力を私立や公立の一貫校であれば、6年間かけてじっくり養うことができると考えられているのだ。実際に一貫校では、「グローバル教育」、理数系教育に重点を置いた「STEM(ステム)教育」(=Science<科学>、Technology<技術>、Engineering<工学>、Mathematics<数学>の頭文字を取ったもの)、それにArt<芸術>を加えた「STEAM(スティーム)教育」など、時代の変化に対応した特色を打ち出す学校が目立つ。内部進学で大学まで進むことができる大学付属校の人気も高まっている。

そんな中、中高一貫校の入試にも変化が出ている。

中高一貫校の入試といえば、2科(国語、算数)、4科(国語、算数、理科、社会)入試が定番だ。しかし、最近ではSTEM教育など新時代に対応した教育をすることを前提にした、新しいタイプの入試を導入する学校が増えているのだ。

算数1科入試導入が相次ぐ

中でも急速に広がりをみせているのが、「算数1科入試」だ。攻玉社、高輪、鎌倉学園という以前から導入していた学校に加え、2018年度入試では品川女子学院、大妻中野などが、2019年度入試では新たに巣鴨、世田谷学園、普連土学園、栄東といった学校が新たに導入した。

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理系人材の需要が高まっており、算数が得意な生徒を確保して育成につなげたいという各校の思惑がある。大学入試でも、国公立大のみならず2021年度からは早稲田大学政治経済学部が数学I・Aを入試の必修科目にするなど、私大文系志望者でも数学が無関係とはいえない状況も後押しする。

中学受験生にとって、算数1科入試は、従来の2科、4科入試に比べて負担が少ない。首都圏模試センター・教育研究所の北一成所長は「難関校を目指す受験生は算数の強い生徒が多く、その併願を狙っている」と分析する。また、2020年度入試からは、湘南白百合、田園調布学園、富士見、啓明学園、駒込などが算数1科入試を導入する予定だ。

さらにユニークな新型入試も続々と登場している。例えば、北区にある男子校・聖学院中は2013年度から思考力入試を始めた。中でも目を引くのが、レゴブロックを使った「ものづくり思考力入試」だ。

これは、社会問題に関する解決策をレゴブロックと文章で表現するもの。4人1組のグループをつくり、どのような意図で作品をつくったのかを説明し、それに対して他のメンバーが、気づいたことや、改善点などを書き込む。レゴづくりから創造力を、ディスカッションによって他人の話を聞く力などを評価する。

同校の児浦良裕・広報部部長は「男子は言葉で表現するのが苦手な子どもも多い」と言い、ものづくり思考力入試では自らの考えをレゴで表現させることによって、表現力を評価しているという。

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