中高一貫校の入試スタイルが激変し始めた事情 理数教育注目で創造力や思考力試す問題続々

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聖学院中では、「ものづくり思考力入試」など思考力を試す入試の一部でレゴによるものづくりをする (写真:聖学院中)

さらに、思考力入試で入学した生徒の中には大きく伸びる生徒が少なくないという。同校では、このものづくり思考力入試のほか、資料や写真から気づいたことを作文させる「M型思考力入試」や、資料をみてその解決策をレゴで表現し、文章で解説する「難関思考力入試」を実施している。この3種類を合わせた入学者が2割にも上る。この割合をさらに高めていきたい考えだ。

一方、駒込中では、2019年度からSTEM(プログラミング)入試を導入した。同校でSTEM教育に力を入れているのを受けたもので、算数問題と、実際にビジュアルプログラミング言語「スクラッチ」を使ってプログラミングをする。STEMの力を試す算数では、駅から学校までの経路について考えるものなど、生活の場面に関連づけた内容を出題している。

PBL入試に踏み切った和洋九段女子

和洋九段女子中では、2019年度入試からPBL型入試を始めた。同校では4年前から全教科の授業の2割ほどで、PBL(問題解決型学習)を取り入れている。PBLとは、アクティブラーニングの一種で、正解のない課題に対し、生徒の間で分析や議論を重ねて、解決策を提示する教育手法だ。授業を通して生徒を評価するための知見が蓄積されたことから入試でも導入に踏み切った。

PBL型入試では数人のグループを組み、与えられたテーマについて個々に考えたのち、議論を重ね発表する。例えば「桃太郎になったつもりで、鬼ヶ島に連れて行く3種類の動物を考えよ」というテーマが与えられる。試験ではタブレットが貸与され、足りない知識は検索することができることから思考力に重きを置いた試験であることが分かる。

アイデアの質よりも、発表に至るまでのプロセスを評価することに重点を置いている。議論の進行を担ったり、発表役を買って出たりする子どもが有利になるのではと考えがちだが、「ほかの子どもの話を聞いてうなずいたら加点をするなど、相手を尊重したり協力したりできるかを重視している」(中込真校長)という。

レゴによるものづくりやプログラミング、問題解決といっても難しく考える必要はない。事前に対策や評価のポイントを解説する入試説明会や体験会を実施しているため、6年生になってからの準備でも対応可能だという。

駒込中の河合孝允校長はSTEM(プログラミング)入試を「(体験会を通して子どもを)育てる入試」と表現する。中学入試の形態は、知識偏重の問題から「思考力・判断力・表現力や」「学習の主体性」といった新しい時代に求められる資質を持った子どもを発掘するための問題に変わり始めている。

『週刊東洋経済』7月27日号(7月22日発売)の特集は、「子どもが幸せになる学校選び 中高一貫校」です。
常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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