なぜいま東京の若者が「農業」を始めるのか レストランで収穫後すぐの野菜を提供できる
ここ10年で東京都で新規就農者が増えた理由としては、農地貸借の制度が変わり、充実してきたことがある。これまでは、農地を所有することが優先されてきたが、新しい制度では、農地を貸借することに重点を置いた。一般の人でも農業を始めやすくなったということだ。
「2018年8月からは市街化区域でも農地が借り入れられるようになり、すでに日野市で新規就農者が誕生しています。新規就農希望者がこれほど増えているという現状から、東京都のほうでも支援体制を整えてきています」(松澤氏)
【2019年7月29日17時00分追記】初出時、農地借り入れ区域の表現に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
2020年には東京都の施設として新規就農研修センターの開校が予定されている。
では、なぜあえて東京で農業を始めるのか。そのメリットを、松澤氏は次のように分析する。
東京は人口が多く、露地野菜も販売しやすい
「大きなメリットは開業資金が少なくて済むこと。最低300万円程度の貯金でも始められます。というのも、周囲に農家が少ないためです。地方では新規の農家がジャガイモやタマネギといった一般的な農作物を作ってもあまり売れません。
そのため、新規就農者はブランドのフルーツなど特産物で参入するケースが多いですが、ビニールハウスなどの設備費もかかります。東京はなんといっても人口が多いため、一般的な露地野菜も販売しやすいのです」(松澤氏)
ただし、気軽に始められるとはいえ、継続することは難しいそうだ。農業で収益を上げていくには、枝豆の豆を枝から取り外す、ビニールで包むといったこともいちいち人力で行っていては体がもたない。機械化して効率化を図る必要がある。最初はコストをかけずに開業したとしても、ゆくゆくは設備投資が不可欠なのだそうだ。
「昔から農業をやっている人からは『儲からないのになんでわざわざ始めるんだ』と言われていますが、みんな農作業が好きで、楽しそうにやっているのが何よりいいことです」(松澤氏)
農作物の販売先は、先に挙げたシズラーや、スーパーのいなげやなど、東京都農業会議が主体的に開拓した企業だ。また、地元の農協直売所、幼稚園・学校給食などに販売している農家も多いそうだ。
「野菜のおいしさは鮮度で決まります。名産地から運んでこられるものに引けをとらないどころか、それよりおいしいものも多いですよ」(松澤氏)
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