なぜいま東京の若者が「農業」を始めるのか レストランで収穫後すぐの野菜を提供できる

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レストランのコンセプトは「畑」。店内には農具などが飾られるほか、料理も、野菜そのもののおいしさをシンプルに伝えるものが多い。客単価は飲み物を含め5000円程度で、月に1000万〜1500万円の売り上げがある。

レストランで一押ししているのがケール。青汁の材料という印象が強いが、ニューヨークではスーパーフードとして人気がある野菜だ。ケールはそして、同社を成功に導いてくれた野菜でもある。

ケールを使った「サラダ シーザードレッシング」980円(筆者撮影)

「開業間もない頃は切羽詰まったこともたびたびです。あるとき、残り2万円ぐらいになって、5日後に100万円の支払い期日が来てしまうということがあった。でも急にお客様が重なって来てくれるなど、急に満席が5日間続いて助かりました。今でもあのときのことは『奇跡だったね』と言い合っているんです。

代々木上原のお客様は食の感度が高くて、ケールを出しているということで、それを目的に来てくれたことが大きかった。当時はケールそのものが珍しく、しかもオーガニックでという店は希少だったのだと思います」(古森氏)

提供者と消費者、双方にとってメリットがある職業へ

同社の目標は、第1次産業の活性化。今後はレストランにこだわらず、中食など、農業を用いた新たなビジネスモデルをつくっていきたいという。農業を志す若者が増えた理由について、次のように考えているという。

ALL FARM社長の古森啓介氏。農業と飲食店の一貫事業を思いついたのは19歳のときだったという(筆者撮影)

「お金を儲けて、いい車に乗ってという価値観から、どう生きていくか、どういうコミュニティーに属するかという価値観へと変化している気がします。私もそうした思いに応えて、やりがいがあって、利益も得られる。そして消費者によりおいしいものを届けられると、双方にとってメリットがある職業へと育てていきたいです」(古森氏)

農業全体を取り巻く状況は確かに厳しいが、一方で、新しい道を模索する事業者が増え、社会も変わってきている。何より第1次産業や、食の質・安全といったことへの関心が高まっている。都内近郊での新規就農者増加は、農業に新たな風を呼び込むきっかけとして、大いに期待できるのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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