なぜいま東京の若者が「農業」を始めるのか レストランで収穫後すぐの野菜を提供できる

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次に紹介するのは、近郊の自社農場で収穫した野菜を都内で提供するレストランチェーン、ALL FARMだ。

WE ARE THE FARM 目黒は席数60席の開放感ある空間が特徴(筆者撮影)

2014年にWE ARE THE FARM 代々木上原を開業して以来、現在までに直営店5店舗、フランチャイズ店3店舗を展開している。

同社の特徴は、固定種と呼ばれる野菜を、無農薬無化学肥料によって栽培していること。またレストランで、収穫後1〜2日以内の新鮮な野菜を提供していることだ。

固定種を年に150〜200種類栽培

現在一般に流通している野菜はほとんど「F1種」と呼ばれる、生産や流通に適した種の野菜。一方、同社で提供する固定種の野菜は、例えば京都の「万願寺とうがらし」や、金沢の「打木源助だいこん」など、味はよいが、形がふぞろいで、育成や流通が難しいものばかりだ。少量多品目で、年に150〜200種類を栽培しているという。

固定種がなぜ難しいかというと、例えば京都の「山科なす」という野菜は、皮が薄くて肉が軟らかいため、傷がつきやすい。流通段階で売り物にならなくなってしまうのだ。また、打木源助大根はラグビーボールのような形で、しかも大きさがまちまち。大変なのが収穫時だ。F1種の大根はまっすぐなので「スポッ」と抜けるが、この大根は抜くのにまわりを丹念に掘っていかなければならず、時間と手間がかかる。

UFOズッキーニを使った「ズッキーニとひき肉のオーブンチーズ焼き」1180円(筆者撮影)

農業を仕事にしようと思った理由、そしてあえて難しい野菜にチャレンジした理由について、代表取締役社長の古森啓介氏は次のように説明する。

「野菜を食べるのが好きで、農業をやりたいと思っていました。農業だけでは厳しいが、販売まで自分で行い、流通できない野菜を提供していくことで、付加価値をつけられると考えました」

千葉県佐倉市にあるALL FARMの自社農場「在来農場SAKURA」。6ヘクタールの畑で、200種に及ぶ在来種の栽培を行っている(写真:ALL FARM)

高校時代の友人で、同じく野菜好きだという寺尾卓也氏とともに事業を立ち上げた。古森氏がレストラン、寺尾氏が農場経営という担当分けをしているが、きっぱりと分けているわけではない。農場からレストランでの提供までを一貫させているところに同社の特徴がある。そのため、古森氏をはじめ、レストラン担当の社員一同も月に1度は千葉県佐倉市にある畑に赴き、農作業にいそしむという。

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