改正貸金業法の完全施行が近づくが、視界不良の消費者金融業界
このグループ内の事業再編ビジョンをおさらいすると、次のようになる。すなわち、アコムがDCキャッシュワンのローン事業を統合し、さらに三菱UFJ住宅ローン保証の小口無担保ローン保証事業と、三菱UFJニコスが行ってきたカードローン保証事業の移管を受ける。この結果、アコムの小口無担保ローン保証債権残高は、これらの事業統合が行われる09年度前半には5000億円規模に拡大する。
三井住友との提携によって、ローン保証業務分野でアコムに先行したプロミスのローン保証債権残高は、昨年9月末時点で4226億円を誇る。これをアコムが急追することになるわけであり、アコム、プロミスの同残高が拮抗する場面が、09年度に訪れることは間違いない。
ちなみに、従来、営業利益率が1.5~2%程度のローン保証業務は、大手消費者金融専業の場合、財務基盤の強さをバックボーンに低廉な資金調達を実現できたこともあって、自らが実行するローン事業の営業利益率と比較すると、大きく見劣りしていた。
しかし、今は完全に状況が変わってしまった。相次ぐ赤字決算によって、かつてのような盤石な財務基盤は大きく毀損した。金融危機の中にあって、資金調達コストは利益率を大きく下げる要因になってきている。資金調達の厳しさは貸付金残高の成長制約要因にすらなりつつあるのが実情だ。その一方で、銀行提携によるローン保証事業は自前の資金調達は不要であることから、残高成長に伴う業務の効率化によって営業利益率を改善していくことも期待できる。
大手専業では改正貸金業法の完全施行後をこうにらむ。
「1兆円規模のローン残高を維持できて、与信コストの抑制に成功したとしても、上限金利の完全引き下げによって、ローン事業の営業利益率は3%台まで低下せざるをえない。資金調達コストがかさむようであれば、さらに利益率は下がることになる」
こうなると、「1.5~2%程度プラス・アルファ(効率化による改善余地)」というローン保証事業の営業利益率はローン事業に比べて、何ら遜色のないビジネスに変わる。アコムはMUFGとの事業再編を発表後、山形銀行や、KDDIとMUFGによる合弁銀行である、じぶん銀行と相次いでローン保証提携を結んだ。今後、MUFGの親密地銀との間で事業提携が拡大する可能性は高い。
さらに「小口無担保のビジネスローンなどでも提携の余地はある」