与党優勢の参院選、関心は早くも「選挙後人事」 幹事長に菅氏、岸田氏は財務相起用説も浮上

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このため、党内では次回人事でも3氏の続投を有力視する向きが多い。参院選の司令塔の二階氏は、かねてから幹事長続投を狙っているとされ、「参院選で自民が勝てば、続投以外の選択肢はない」との見方が多い。その場合、幹事長ポストでの「ポスト二階の本命」とされる菅氏も官房長官続投が順当ということになる。そうなると、「麻生氏だけを外すことはありえない」(首相周辺)だけに、首相も「とりあえず3本柱続投という安全策を選択する可能性が大きい」(自民幹部)というわけだ。

しかし、長期化した1強政権のもと、与党や霞が関官僚による「過度の忖度(そんたく)」が政治をゆがめているとの批判も根強い。与党内からも「任期満了まであと2年余となれば、人心一新による安倍新体制づくりが必要」(公明党幹部)との声も広がる。政権運営をめぐる党内の閉塞状況を打破し、首相も後継者づくりに取り組むことが「歴史的大宰相への道」(首相経験者)とみるからだ。

党内の一部では、二階氏を副総裁に格上げして菅氏を幹事長に据え、岸田氏を麻生氏の後任の財務相に起用する人事案も取りざたされている。麻生氏については首相との盟友関係を傷つけないため、副総理のまま、五輪担当相として東京五輪の総責任者とする案も浮上している。東京五輪直前の1964年7月の第3次池田勇人内閣で、党内有数の実力者だった河野一郎氏(故人、河野洋平氏の父、河野太郎外相の祖父)が副総理、東京五輪担当相を務めた例もあるからだ。

例年と異なる「9月上中旬人事」の可能性も

人事のタイミングも注目されている。7月の参院選後の人事は選挙結果を踏まえて7月末から8月初旬に行われるケースが多く、2016年の参院選後は8月3日に人事を断行した。今回も8月初旬説が有力とされていたが、ここにきて首相周辺では9月上中旬説が浮上している。

9月末か10月初旬とみられる次期臨時国会の召集や、8月から9月にかけての首相の首脳外交の日程を考慮したものだ。ただ、お盆休み後の9月上中旬人事では、党内状況が変わる可能性も少なくない。このため、党内には「あえて時間を置くとすれば、首相が人心一新の可能性を探るためでは」(岸田派幹部)との臆測も広がる。

「憲法改正を国会で議論するのか、しないのか」を選挙の争点に掲げた首相だけに、仮に参院で改憲勢力3分の2を失っても、参院選での与党勝利で「国民が憲法論議の必要性を認めた」と主張して任期内の改憲実現に猛進する可能性もある。その場合、党・内閣人事で「改憲シフト」を進め、「改憲慎重派とされる二階氏を菅氏と交代させ、党や国会役員人事でも要所に改憲派を起用する」(細田派幹部)とみる向きもある。

今回、安倍首相が衆参同日選を見送ったのは、衆院での改憲勢力3分の2を失うことを恐れたからとされる。政権幹部も「首相にとって、国政選挙は今回が最後との思いもあるはず」と安倍首相の心中を推し測る。「任期満了までのあと2年2カ月を、解散権を行使せずに改憲実現にまい進するのでは」(自民幹部)とみるからだ。

だからこそ、自民党内では早くも選挙後の人事に注目が集まっているのだ。11月下旬には史上最長政権という勲章を手にする首相が「政権のレガシー(政治的遺産)づくりなど、安倍政治の締めくくりをどう考えるのか」(首相経験者)によって新体制の陣容は変わる。そこに、麻生、二階、菅3氏の権力闘争と、石破氏らのポスト安倍の戦いも絡む。安倍首相が人事断行でこれまで以上に熟考を強いられるのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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