ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠 医師主導臨床研究は「製薬会社主導」だった
本誌が入手したSIGN研究の「実施計画書」では、「利益相反と研究資金源」の項目に次のような記載がある。
「本研究の計画、実施、発表に関して可能性のある利益相反(conflict of interest)はない。利益相反とは研究に影響するような利害関係を指し、金銭および個人の関係を含む」
だが、臨床研究が製薬会社の協力にどっぷり依存していた実態はこの記述から大きくかけ離れており、実施計画に記されている研究実施のルールにも違反していることは明確だ。
中間解析結果を販促にも使用
看過できないのは、ノバルティスが、臨床研究の中間解析結果をセールスプロモーション(販売促進)にも活用していたことだ。この事実は記者会見で二之宮社長が認めた。
2013年10月に札幌市内で開催された日本血液学会学術集会での発表スライドを元に、ノバルティスは販促資料を作成。2カ月にわたって医療関係者などに配付していた。さらにこの発表スライド作成にもノバルティス社員が関与していた形跡が、前出の医療施設が調べた電子メールでの通信記録から見つかっている。
「医師主導臨床研究の名を借りた企業によるバックアップ研究ではなかったのか」との記者会見での質問に対して淺川常務は「事実関係について調査中」と答えるにとどめている。しかしながら、ノバルティスがここまで深く研究に関与していた以上、「医師主導臨床研究」という謳い文句そのものが虚偽だった可能性が高い。
東洋経済の取材に応じた参加医療施設の関係者は「東大病院の黒川教授から誘いを受けたとはいえ、深く考えずに研究に参画したのは軽率だった。黒川教授には事実関係について説明を求めているが、何の返事もない。研究責任者としてきちんと経緯を明らかにしてほしい」などと語っている。
なお、東大病院からは、「調査に時間を要する」ことを理由に疑惑を晴らすことにつながるような回答は得られなかった。
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