ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠 医師主導臨床研究は「製薬会社主導」だった
加えてノバルティスの東日本営業部内において、担当する医療施設でのアンケート記載枚数を競わせる「インセンティブプログラム」が実施されており、2つのチームのうちでより多くの枚数を達成したチームに上司との会食やスターバックスコーヒーで使える無料チケットを配るなどの報償を与えていたことも同社が明らかにした。二之宮社長は「医師主導臨床研究にインセンティブプログラムを関わらせたことはいかなる形であっても絶対に認められない」と述べる一方、「社内審査をすり抜けて現場で行われていた」(同氏)としている。
ノバルティスが研究をお膳立て
ただ、「現場による不祥事」を強調するノバルティスの発表で疑惑が晴れたわけではない。担当の淺川一雄・常務取締役オンコロジー事業部長が記者会見で「事実関係については調査中」と繰り返したように、ノバルティスは多くの疑惑をベールに包み込んだままにしている。「実態はノバルティス主導の臨床研究だったのではないか」(東京大学医科学研究所の上昌広特任教授)と見られていながら、同社は、「3月をメドにした専門家による調査の終了を待ちたい」(二之宮社長)などと、時間稼ぎと受け取られかねない発言をしている。
こうした中、臨床研究に参加した医療施設関係者への取材から、疑惑の全容解明につながりうる驚くべき事実が明らかになってきた。
この医療施設が報道をきっかけに調べたところ、「臨床研究申請書」や「実施計画書」など多くの文書がノバルティスのMRから直接、医療施設宛てに電子メールで送られてきていたことがわかった。また、実施計画書や患者への説明文書、アンケート同意書のひな型などおびただしい数の文書がノバルティスの社内で作成されていた形跡があることも、東大病院の担当者から送られてきた電子メールに残された記録から明らかになっている。具体的にはワードやエクセル文書のプロパティ(作成者などの情報)欄に「Novartis」の記載があった。
ノバルティスは記者会見で、「(東大病院が中心となった)研究組織に対して、アンケート用複写用紙の印刷の手伝い、プロトコル委員会への弊社東京事務所会議室の貸し出し、医師に対する試験の案内、アンケート用複写用紙の提供等の手伝いを実施していたことが判明している」などと説明しているが、実際の関与ははるかに深いことがわかる。
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